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小さな小さな冒険

by 唐草 [2020/01/17]



 職場へと向かう通勤経路は2つある。マイカー通勤や自転車、徒歩などを様々な移動手段を考慮したり、寄り道したりする経路を考えれば、経路の数はもっと増える。2経路というのは、あくまで公共交通機関だけの経路を選んだ場合の話である。
 普段は、最短経路になるルートを選んでいる。距離も、時間も、料金も、そして乗り換え回数もこのルートがベストである。乗換案内で検索してもこの最短ルート以外の経路は出てこないだろう。
 合理的で無駄のない生き方をするのであれば、素直に最短ルートだけを選んでいればいい。でも、コピペのように同じ毎日を繰り返す生き方は豊かと言えるのだろうか?安定こそもっとも大切なものだという考え方も理解できる。それでも、毎日同じものを食べていたら、たとえ美味しく栄養豊富なものでも飽きてしまう。体に悪いとわかっていてもジャンクなものを口にしたくなることもある。それと同じで、時には無駄だと分かっていることをしたくなるものである。
 今日のぼくは数年来慣れ親しんだ最短ルートではない通勤経路を選んだ。これをルートBと呼ぼう。
 最短経路とルートBは、途中まで完全に同じだ。最短経路だと電車を降りる駅がある。普段はその駅からバスに乗って職場へと向かう。でも、今日はその駅で降りなかった。別の路線に乗り換えて2駅ほど先まで進んだ。ここまで来ると職場を通り越している。でも、心配は無用。2駅先の駅からも職場方面へのバスが出ている。
 渋滞しがちな国道をバスでチンタラ走って職場へと向かう最短経路。一方のルートBは、早い電車でちょっと先まで行って、バスで少しだけ戻る経路だ。どちらが早いかは、すぐには判断できない。なお、ぼくにとって都合がいいことにどちらの経路でも値段は同じなのである。JRの区間料金が産んだマジックである。
 乗り換えの関係で、今日は普段より10分余計にかかってしまった。やはり最短ルートは、お墨付きの経路だけのことはある。
 いつもと違う車窓からの眺めは、キラキラ輝いて見えた。普段は正面口から職場に入っているが、今日は裏口からの出社となった。バスから見える建物の姿が、普段とは逆向きなので全然知らない場所へやってきたかのようにさえ感じられた。
 余計にかかった10分は、ぼくにとって小さな小さな冒険のひとときだった。