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願い叶わず

by 唐草 [2020/02/08]



 数年前から漢字が書けなくなってきている。今のぼくは、小学5年生と漢字書き取り対決をしたらダブルスコアで負けるだろう。
 今でこそこんな有様になってしまったが、これでも中学入試のために必死に漢字の勉強をした。読み・書き・送り仮名を勉強して常用漢字の大半を自由に操れた輝かしい過去もある。時の流れは残酷なもので、今となっては読み以外の能力は風前の灯である。
 前にも書いたが、もはや自分の書いた漢字が信じられなくなってきている。自分が書いた文字が正しいわけがないと思い込んでいる末期的な状態に陥っている。自分自身を信じられなくなるというのは、こうも悲しいことなのかと悲劇の主人公気取りの毎日だ。
 昨日、職場に提出する1枚の書類を書いていた。当然のことながら日付から名前に至るまですべての文字をPCで入力している。ここまでは問題なかった。ところが、ちょっと例外的な処理を依頼する必要があったので本来の様式から外れたことを書いていた。そのまま提出しても事務の方で処理してくれるとは思うのだが、組織図に載っていない部署であるぼくらのことをすべての事務員が正しく把握しているとは思えない。だから、一筆添えることにした。
 蛍光ピンクの付箋を書類に貼り付けて「〇〇予算でお願いします」と書き添えようとした。しかし、「願」の字を書こうとしたぼくの手は、凍りついたように動かなくなってしまった。「願」の字が思い出せなくなってしまったのである。いつもメールの末尾には「よろしくお願いいたします」と打っているのに思い出せないのである。悲しいことだが、見慣れた漢字を書こうとして手が止まることはたびたびある。だから、手が止まったことに驚きはなかった。またかという不甲斐なさを感じるだけであった。
 実際のところ漢字を思い出せなくても、さほど問題はない。PCに打って出てきた文字を真似して書けば、一件落着。ITの力を借りることで、ぼくの無能さは完全に隠匿できるのである。
 「ねがう」と打って変換をした。
 PCに表示された文字をいくら凝視しても、その文字がぼくの期待していた字形に見えなかった。フォントのせいかと思ってゴシックから明朝に変えてもダメだった。ぼくの漢字リテラシーは、ついに分の見ている字すら信じられないレベルまで低下してしまったようである。PCで文字入力ができなくなる日も、そう遠くなさそうだ。