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テキストエディタ

by 唐草 [2020/03/31]



 世界でもっとも有名なテキストエディタは、Windowsのメモ帳(notepad.exe)だろう。その知名度に反して、メモ帳を活用している人は少ないはず。文字入力という機能しか備えていないので、何をするにも力不足で役に立たないソフトだという印象しか残らないからだ。
 250KB程度のメモ帳は、最小限の機能しか持ち合わせていないテキストエディタだ。だからと言って、テキストエディタというジャンルを甘く見ないでほしい。テキストエディタの世界は、奥深く、そして対立の絶えない世界なのである。
 テキストエディタは文字通り文字入力だけを行うソフトだ。Wordのように装飾したり表を作ることもできない。そんな単純なソフトに奥深さがあるなんて想像するのは難しいだろう。でも、こう言いかえると見方が変わってくるに違いない。
 テキストエディタは、プログラマの武器である。
 世の中にある多くのプログラムは、ゲームだろうとオフィスソフトだろうと元を辿ればプログラム言語で書かれている。機械に読み込ませるプログラム言語には、華美な装飾も複雑な表組みもいらない。ルールに準拠した文字列が連なっていれば十分なのだ。
 じゃあ、人はその文字列を何で書いているのか?そう、テキストエディタである。
 とは言え、メモ帳だけでOSのように複雑なものを書き上げることは不可能だろう。それどころか、ちょっとしたスマホアプリでさえ困難を極めるに違いない。規模の大きなプログラムは、機械の手助けがなければ人の手に負えなくなてしまうからだ。
 だから目的や規模に応じて様々なテキストエディタが開発されてきた。あるものは数千個にも及ぶ膨大なファイルを管理することを得意としている。別のものはプログラム構文を補完してくれたり、間違いを素早く指摘してくれる。いくつものプログラム言語に対応したものもあるし、世界中の文字コードの取り扱いが得意なものもある。動作の軽快さが売りのものだってある。
 こうして世の中には、目的に応じて様々なテキストエディタが生み出されてきた。きっと軽く100個はあるだろう。だが、悲しいことにその多様性が不毛な争いを招いている。誰もが自分の使うテキストエディタこそが最高だと信じて疑わないのである。きっと今日もどこかでVim使いが狂信者のように声を荒げているに違いない。