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無機質な風物詩

by 唐草 [2020/05/15]



 この季節の風物詩ってなんだろう?ぼくにもう少し教養があって俳句に明るければ、いくつかの季語を並べることもできただろう。残念なことにぼくの言葉の引き出しには、新緑の季節が終わって梅雨入りするまでのわずかな期間を象徴するような言葉は1つも入っていない。
 そんなぼくでも「あぁ、今年も暑い季節が近づいてきているなぁ」としみじみ感じることがある。それがPS4の冷却ファンの音。無機質なゲーム機が撒き散らす騒音に季節を感じるというのは妙な感覚かもしれない。でも、ぼくにとっては間違いなく初夏の到来を予感させる音なのである。
 小さな筐体に高性能な半導体を詰め込んだPS4は熱がこもりやすいゲーム機だ。熱暴走しないように本体を冷やすのは、内蔵された小さなファンの仕事。寒い冬はファンに頼らずとも冷却が間に合っている。回転音は、テレビから流れるゲームの音でかき消されてしまう。
 季節が進んで夏日を記録するようになってくるとテレビとファンの立場が逆転する。暑さで自然冷却が追いつかなくなるとファンは排気のために全力で回りだす。その音は、まるでドライヤーのようだ。ゴーゴーと騒音を撒き散らされたらテレビから出る音は聞こえなくなる。ぼくはテレビのリモコンを手に取り、そっと音量を上げるのだった。
 こうしてファンの音が無視できないほど耳障りになってくると、ぼくは夏が近いと感じるのだ。まったく優雅ではないし、共感してくれる人も少ないだろう。それでも、ぼくのとっては立派な風物詩なのである。
 面白いことに、この騒音は長くは続かない。夏本番が到来すると冷房を使うようになる。室温は、いま時分より低くなるのでファンはおとなしくなる。全速力で回転するファンの仕事っぷりを耳で感じられるのは、1年で今のこの季節だけなのだ。そう考えれば、無機質でうるさいファンを風物詩と呼ぶぼくの気持ちも理解してもらえるかも知れない。
 昼とはうって違って、夜になると長袖が恋しくなるぐらいに気温が下がる。するとファンも一休みするように回転を抑える。音を立てなくなったファンの存在に気がつくのは難しいものだ。夜になってテレビの音量を2段階下げた時、やっとファンが静かになったことに気がつくのである。