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クルクルしちゃう

by 唐草 [2020/06/10]



 4週目にしてようやくオンライン授業の実施にも慣れてきた。少なくとも石のように身じろぎせずに喋り続けて尻を痛くすることはもう無い。適切なマイク感度設定も分かってきたので、無駄に大きな声を張り上げないで済むようにもなってきた。学生の反応が見えないので張り合いがないのは相変わらずだが、顔を映すように強制したとしても退屈そうな顔がたくさん並ぶだけだろう。だったら見えないほうが幸せだと開き直りつつある。
 余裕が生まれてきたことで、即席マイクスタンドに向かって喋っている自分を少しだけ客観視することができるようになってきた。
 椅子に座ってひとり黙々と喋っているだけなのだが、教壇に立って喋っているときと同じように汗をかく。額を伝う汗は、立って大声を出しているから流れるものだと考えていた。座っていても流れるのだから原因は立っていることではない。頭をフル回転させて喋る内容を考えることそれ自体が、額に汗するほどの負荷となっているのだということだ。
 もう1つ気がついたことがある。PC画面を共有しながらマイクに向かって喋っているだけなので、両手は暇を持て余している。教壇に立っていれば指し棒を使ってりスクリーンを指したり、身振り手振りを交えたりと手が活躍する場面がたくさんある。でも、オンライン授業ではせいぜいスライドを送るためにキーボードを叩くぐらいだ。
 暇を持て余した手は、知らず識らずの内に手を慰められる何か求めていた。気がついたら自分の指にクルクルとイヤホンのコードを巻き付けていた。
 喋りながら無意識にコードをクルクル巻き付けてしまうのは、固定電話で話しているときと同じである。意識が喋りに集中して手のコントロールが疎かになると勝手に指が何かを求めてしまうのだろうか?
 そう言えば、仕事でボイスチャットをしているときもコードを束ねる針金でコイルを作ってしまう。変なものを触ってゴソゴソと耳障りな音を立ててしまうぐらいなら、無音でいじれる針金のほうがマシだということでぼくの机にはこねくり回す用の針金が常備されている。
 ケーブルをいじってしまうのは電話やボイスチャットのときだけ現れる癖だと考えていたが、そうではないようだ。喋りに集中しているときの癖なのだ。来週は愛用の針金を傍らに置いて授業に臨もう。