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使わないところを使う

by 唐草 [2020/06/22]



 運動不足解消のために午後9時ぐらいから近所を散歩することが多い。人とのすれ違いを抑えることを最優先した結果、夜の散歩というスタイルにたどり着いた。これはガチガチの自粛生活を送っていた4月頃から始めた新しい習慣である。
 歩く距離やコースは、その日の気分や気温次第。少なくとも5000歩は歩くとか、最低でも4キロは稼ぐなんていう感じの目標は何もない風まかせのゆるい散歩。気が向けば45分ぐらい歩くし、ちょっと外の空気を吸いたいだけの日は20分ぐらいで切り上げてしまう。
 緊急事態宣言が発令された直後は、夜道を散歩しても人の気配すら感じなかった。だが、日を追うごとにぼくと同じく夜のささやかな運動を楽しむ人が増えていった。その変化を見ることは、徐々に新しい生活様式へと馴染んでいく過程を観察しているようだった。
 散歩をしている人も増えてきたが、颯爽とジョギングしている人の姿も元に戻りつつある。その姿を見て、ぼくも夜のサイクリングを復活させうようかと考え始めている。でも、夜とは言えども広範囲の移動はリスクを高めてしまう。1日でも早く自転車に跨りたいのだが、ずっと楽しく自転車に乗っていられるためにも慎重には慎重を重ねよう。
 自転車に比べて徒歩だと移動範囲も移動速度もずっと限られてしまう。コースだって平坦な道ばかり。だからいくら頑張って歩いても体への負荷が限られる。自粛が始まって以来、アドレナリンに酔うことは叶わないでいた。
 土曜日の晩に通り慣れた道をあるいていたぼくは、ついに我慢できなくなった。もっと負荷をかけてアドレナリンを感じたい。
 この単純な想いは、ぼくの中のスイッチを確実に押したようだった。ぼくは歩くのを止めて、家までの残り1キロを走ってみることにした。普段走るのは、電車に飛び乗るときか、信号が変わりそうなときぐらい。だから50mも走っていないだろう。体だって走り方を忘れているに違いない。案の定、ぼくの走りはドタドタと鈍い足音を響かせていたし、歩きと変わらないスピードしか出せなかった。
 それでも、鈍った体には十分な負荷があった。アドレナリンを久々に感じたし、2日経った今もまだ筋肉痛だ。