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キーの下は

by 唐草 [2020/07/21]



 ぼくは黒いキーボードを使っている。キーボードで白い部分はキートップに印字された文字や記号だけのはずだ。だが、キーの隙間からわずかに覗くキーボードの底が白く見える。
 細い隙間を凝視しなくても底に覗く白いものの正体はすぐに分かる。
 キーボードは隙間の多い機器だ。だから、知らぬ間にゴミやホコリが溜まっていく。ぼくはPCデスクでの飲食を避けているので食べかすは無い。だからカビの心配はない。だが、机を汚すのは飲食だけではない。
 我が家には多くの猫がいて我が物顔でPCデスクの上に乗る。そこで気持ちよさそうに後ろ足で体を掻くと細い毛が飛び散り机に積もる。毛の多くはぼくが掃除しているが、細い毛をすべて取るのは不可能だ。少なくない数の猫毛が、キーとキーの間に吸い込まれていることは間違いないだろう。
 一度気がついてしまった汚れを放置するのは気分が悪い。それまで気が付かずに涼しい顔して使っていたとしてもだ。汚れているという事実よりも、汚れていることを知ってしまったということのほうが重要なのだ。
 久々にすべてのキーを外して本格的な掃除を行うことにした。ヘラを使ってポンポンとリズミカルにキーを外していく。このとき重要なのが、並び順が分かるように外したキーを並べておくことだ。外したキーを無計画に放置するとエンターキーの左隣にある記号エリアのはめ直しにひどく苦労することになる。
 すべてのキーが外され丸裸になったキーボードを直視すると底面にまるで白く薄いフェルトが敷かれているようだった。黒と白のコントラストはきれいだったが、衛生面から見ると最低の状態だ。カビは生えていないが、ダニがいても不思議はない。自分の指の下1cmにこんなにも汚い層が形成されていた事実にショックの色を隠せないでいた。
 汚さに狼狽していても何も変わらない。敢然と掃除機を手にしてすべてを吸い込んでいった。掃除機でも吸えない細い隙間に挟まった毛はピンセットで掴んで除去した。
 ついでにキーも磨いた。よく使う母音キーの隣のキーの側面に手垢っぽい汚れがついていた。表面は拭くけど側面は盲点だった。
 きれいに使っているつもりでも生身の人間と猫がいる限り汚れの蓄積は避けられない。次こそは、ひどくなる前に手を打とう。毎回思うことだが、実行できた試しはない。