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機械の体

by 唐草 [2020/08/26]



 機械が吐き出した無味乾燥な大量のデータをエクセルを使って整理や分析をしていると決まって感じることがある。何度も同じ操作を繰り返えしているという既視感にも似た小さな混乱だ。見やすいように空行を入れたり、条件式のコピペをしたりと行や列の数だけ単純な処理を繰り返した結果だ。
 操作の大半はマウスが担っているし、ソフトの補助を借りればドラッグだけで終わることもある。でも、取り扱うのが不規則なデータの場合ドラッグだけではうまくいかないこともある。そういうときは、データを目視しながら泥臭く単純な操作を繰り返すしかない。
 実行したい処理のほとんどすべては、ありふれた処理に過ぎないのでマウスだけで完結する。簡単な操作なのだが、既視感に苛まれるほど操作を繰り返していると思いの外時間がかかっていることに気がつく。画面の端から端までマウスを動かしたり、精密に範囲指定することに想像以上の時間を費やしているようだ。冷静にポインターの動きを見つめるとクリックすべき場所を追って移動している時間が長い。
 本質的な操作よりも、命令を選ぶための移動時間が長いのだ。労働より通勤に時間を費やしているくたびれたサラリーマンのようだ。
 こういうときに頼りになるのがキーボードである。コピペだってマウスだけでできるが、キーボードショートカットを使ったほうがずっと素早く正確に操作できる。同じようにエクセルもキーボードで操作できれば、もっと効率良く使いこなせるに違いない。
 ググったり、メニューを確認してよく使う命令のキーボードショートカットを確認してみた。ぼくの予想通りほとんどの操作が対応していた。
 マウスから手を放し、キーボードだけでエクセルに立ち向かってみた。
 左手の小指と薬指を駆使してCtrlキーやShiftキーをたどたどしく押さえて不慣れなショートカットを入力していく。慣れない指の動きに違和感を隠せないが、マウスよりも無駄なく命令を実行できる。こうなればこっちのものだ。操作を考えるのをやめて、楽器演奏入門のように運指だけを考えていく。
 小指、中指、小指、薬指。そんなことを頭の中で唱えながら機械のような正確さで操作を進めていく。キーボードを通してPCと一体になれたような気がする。