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関節の正しくない使い方

by 唐草 [2020/10/20]



 コロナ禍を乗り切りために新たなスキルを身に着けた人も少なくないだろう。ぼくもスキルと呼ぶにはチープな小さな技術をいくつか身につけた。
 そのひとつが、吊り革や手すりに捕まらずに電車やバスに乗るスキルだ。地味なスキルかもしれないが、バカにはできない。多くの人が手にする吊り革は感染リスクが高い。触らずに済むならそれに越したことはない。とは言え、今まで無意識に掴んでいたものを掴まなようにするためには、思いの外注意を払う必要があった。意識外の小さな行動を制御することの大変さを思い知らされた。
 吊り革以外にも気をつけていることはある。自分でも「ちょっと過剰に反応しすぎているかな?」と感じているが、日々の些細な行動を見直してリスク低減に努めている。多くの人が同じように努力を重ねているのだろう。
 ぼくが注意を払っているもう1つのことは、エレベーターのボタンの押し方。今まで通りに人差し指の腹で押すのはリスクが高い。洗ったり消毒する前にスマホや自分の顔を触ってしまう。もしぼくが感染していたらボタンにウイルスをなすりつけることになってしまう。
 じゃあ、どうやってボタンを押すべきか?
 テレビで専門家と称する方が「ボールペンで押すとよい」と語っていた。専門家の提言に従ってぼくもボールペンでボタンを押してみたが、ボタンもボールペンもツルツルしたプラスチックなので押すのは容易ではなかった。本当にあの専門家はボールペンで押しているのだろうかという疑念が残るだけの結果となった。
 ぼくがたどり着いた答は肘でボタンを押すこと。エレベーターの呼び出しボタンを肘打ちするのが日常となった。肘なら誤って触るリスクも低い。
 でも、肘には肘なりの弱点がある。
 指と違って押す範囲が広いので、エレベーター内の階数ボタンを押すことは困難を極める。うまく目的階だけを押すことができず、各階止まりとなってしまうこともあった。間違った階をダブルクリックで取り消せるエレベーターもあるが、仮に対応していたとしても肘でダブルクリックは無理。
 肘は諦め多少のリスクを受け入れる覚悟を決めて、人差し指の第2関節で押すことにした。骨ばった第2関節で押すと結構痛い。指が赤くなってしまう。でも、これが今のベスト。