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プリンは懐が深い

by 唐草 [2020/12/30]



 プリンって懐の深いおやつだと思う。プリンを食べているときに、しみじみと感じてしまった。
 一口にプリンと言ってもさまざまなものがある。卵の味が強いものとミルクの味が濃いもの。カラメルのかかっているものとそうでないもの。ムッチリと密度の高い生地とトロトロで柔らかいもの。蒸しただけのものと仕上げに表面を炙ったもの。胡麻とか豆乳を使った意識の高いもの。挙げていったらきりはない。味や食感、作り方で区別してもたくさんの種類がある。
 また、製品別で見てみるとプッチンプリンのようなチープなものもあれば、お中元の和菓子セットでしか見ない缶詰入りのプリンなんてものもある。ぼくは缶の匂いが移っていそうな缶詰プリンがけっこう好きだ。缶詰プリンにしかないような味わいがある気がする。食べ方に注目すると、プリン・ア・ラ・モードのようにフルーツやクリームでゴテゴテに飾り立てるものもある。
 作る人の数だけプリンの種類があると考えていいだろう。シンプルなお菓子かもしれないが、シンプルさ故に多くの派生を生んでいるのだろう。
 世の中には数多のプリンがあるが、「このプリンが元祖」だとか「こういう製法は邪道」というような不毛な議論を聞いたことがない。他のお菓子だと発祥で揉めたりとか、あるレシピに準拠しないのは正統派ではないとされたりすることもある。また、安いものでも高いものではみな仲良くプリンを名乗り、それが許されている。チョコレートだとカカオの量で揉めそうだし、アイスクリームだと乳脂肪分で厳密に区別されている。
 食べ方も自由だ。最初からカラメルを絡めて食べてもいいし、最初の一口は表面を軽くすくうだけでもいい。食べ方で揉めることもない。個人的にはビターなカラメルが好きだが、カラメルがあってもなくてもプリンはプリンだ。タレか塩かで揉めるB級グルメとは一線を画したおおらかさである。
 どこを目を向けてもプリンを縛る法もルールも常識もない。誰かが「これがプリンだ」と名乗れば、それがプリンだと認められる。
 違っていても、同じでもいい。プリンの前では、皆平等にプリン。本当に懐の深いお菓子である。