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ブルー

by 唐草 [2021/03/11]



 ぼくの下の名前は、ちょっと珍しい。と言っても、最近話題の難読キラキラネームではない。字面は至って普通で、読んでもらえなかったことは一度もない。それでも同じ名前の人には一度も会ったことはないし、なぜか文字だけだと女性だと勘違いされることが多い。二十歳を目前にした頃、成人式向け振り袖のDMがたくさん届いたのが懐かしい。特筆すべきは一般的には名字に使われることが多いということだ。つまり、佐藤鈴木みたいな名前なのである。
 相当変わったレアネームの自信があるので、個人情報を隠すべきネットでもこのように堂々とヒントを書ける。過去にもネット経由で知り合ったお互いに本名を知らない友人相手に「ぼくの本名を当てられるものなら当ててみろ!」と自信満々に挑戦状を叩きつけたことがある。なお、その中の数名とは後に一緒に旅行に行くのだが、その際に本名がバレた。正解を知られると「こんなものは当てようがない」という誇るべき感想を頂いている。
 春になって新たな名簿を見る機会が増える。そこに並んだ様々な名前に目を通すたびに、頭のどこかでぼくの本名当てクイズのことを思い出すのである。過去に数名、本気で(一歩間違えばネットストーカーまがいの姿勢で)クイズに挑戦してきた猛者もいる。そういう人が最初に至る答はほとんどの場合同じ。
 今日の冒頭に書かれたヒントから素直にたどり着く答は「アオイ」のようだ。
 確かに「アオイ」は「青井」と書けば名字だ。「葵」や「碧」は女性に多い名前の印象が強いし、「蒼」と書けば男っぽい。このミスリードがあるからこそ、ぼくは自分の名前をクイズに使うことができるし、正解を得ようと見当違いの推理する知人を涼しい顔で眺めていられる。いつだって彼らがアオイの泥沼にハマるのは目に見えている。ありがとう、全国のアオイさん。
 ヒントをよく見てもらいたい。いの一番に「珍しい」って書いてあるじゃないか。アオイは書き方こそたくさんあれど、珍しいとは言い難い。流石に「青井 葵」さんは珍しいかもしれないが、そういう組み合わせの珍しさの話ではない。
 いつの日か、冒頭のヒントだけで本名を当てる人に出会うことがあるのだろうか?恐ろしくもあり、楽しみでもある。