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さよならボールペン

by 唐草 [2020/07/23]



 「一番使う筆記用具ってなに?」と聞かれたら、皆さんは何と答えるのだろうか?
 ぼくの答は決まっている。質問が終わる前に口を動かして鼻息荒く「ボールペン」と答える。もし、この問いかけに続きがある意地悪なクイズだったらアッサリと引っかかってしまうことだろう。
 かれこれ20年以上ボールペンを相棒のように使っている。ちょっとしたメモから重要な書類まで、そして自宅でも職場でもありとあらゆる場面でボールペンが活躍している。
 ボールペンに落ち着くまでは、少しだけ紆余曲折があった。シャープペンを使っていた時代もあるし、その後再発病した中二病的症状で万年筆に手を出したこともあった。インクペンの書き心地は今でも大好きだが、インクの取り扱いの面倒さで目が覚めた。最終的に書き心地と日常使いの手軽さ、メンテナンスがいらないことなどからバランスの良いボールペンだけが生き残った。
 ボールペンを使っていて楽しいのは、文字を書くことではない。細い軸にみっちりと詰まったインクを余すとこなく使い来ることこそが醍醐味である。日々減っていくインクを見ては、取り組んできた仕事や勉強の量に思いを馳せるのだ。
 時々、インクが詰まってしまうこともある。そんなときは力いっぱい降ったりしてせめてもの抵抗を試みるが、たいてい無情な結果に終わる。使いきれなかったボールペンを目にして思うことは、もったいないというケチな気持ちだけではない。愛が通じなかったというやるせない気持ちさえも残るのである。
 ぼくはボールペンにある程度こだわりがあるつもりだが、実際のところはどんなものでも構わない。とにかくぼくの視界に入ったすべてのボールペンのインクを使い尽くしたいと願っている。
 その想いはついに成就した。我が家に数多あった様々なボールペンのすべてを、大半は貰い物の安ボールペンだったが、使い尽くすことに成功した。苦節十余年、一体何本のボールペンを使い尽くして来たのだろう?
 感動のフィナーレかと思ったのだが、厳しい現実が待っていた。書くものがなくなってしまったのだ。
 手元には鉛筆が数本あるのだが、鉛筆削りがない。いちいちカッターで削るのは面倒だよなぁ。ここに来てまさかの万年筆復活か?心のなかで黒っぽいのが好きな幼くも懐かしい感情が渦巻いているのを感じる。