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ドーピング

by 唐草 [2019/11/01]



 24時間365日フルパワーで生きたいと考えているアクティブな人もいるだろう。ぼくは、そんな風に1日中ハイテンションをキープしたいと願う人間が大嫌いだ。ぼくの理想の生き方は、日向でまどろむ飼い猫である。必要がない限り1日中ダラダラとしていて、何かしなくてはいけないときでも一瞬だけ6割程度の力を出せばことが片付くような生き方だ。本気を出す時があるとすれば、それは遊ぶときだけでいい。
 こんな崇高ではっきりした目標があるのだけれど、残念ながらぼくは猫ではないようだ。ぼくは猫とともに育ったので自分自身を毛の生えていない猫だと考えているが、どうやらそう考えているのは我が家の猫とぼく自身だけらしい。世間は一様にぼくのことを人として扱う。いい迷惑だ。
 渋々ながら日の出ているうちは人として振る舞うように心がけている。そうすると何日かに一度、否が応にも全力を費やさねばならない瞬間が訪れる。ちょうど昨日から今日の午前中にかけてが、そんな面倒なタイミングだった。断っておくが、ハロウィンのどんちゃん騒ぎに参加していたわけではない。
 日頃、飼い猫のようにダラダラ生きているぼくが急にフルパワーを出せるわけがない。仮にぼくのポテンシャルが無限大だとしても、それをすぐに引き出すすべを知らないのだ。
 スポーツ選手がなぜ毎日トレーニングをしているかと言えば、試合の瞬間に持ちうるすべての力を解き放つためである。普段からフルパワーを引き出せるようにしておかなければ、必要な瞬間に100%の力を発揮することなどできない。
 では、楽してフルパワーを引き出すにはどうしたら良いか。答えは単純で、そして魅力的である。ドーピングすればいい。それは高いレベルに限ったことではなく、ぼくのようなダラダラ生きる人間でも同じことである。
 ぼくがフルパワーを発揮しなくてはならないのは、主にプログラムを書いているときである。つまり、普段は脳波が止まっていそうなほど錆びついたぼくの脳を血が吹き出すぐらいの勢いまで加速させ続ける必要がある。
 そんなとき効果を発揮するドーピング薬は何か?
 必要なのは、超絶に依存性の高い1種類のドラッグだけだ。糖だ。
 昨日からフルパワーの発揮を余儀なくされたぼくは、全力疾走する蒸気機関車に石炭をくべるような勢いで口に飴玉を放り込み続けている。口の中から飴玉が消えると同時に手も頭も止まる。限界ギリギリラインを保つには、100個単位の飴玉が必要なのである。砂糖は本当にヤバいドラッグである。