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考えたら負け?

by 唐草 [2020/01/14]



 昨年末に発売されたモンハンのモンスターを生物学者がマジメに検証している『超生物学』という本が面白いとの噂を耳にした。「こういう形の牙ならこういう食性や行動が考えられる」といった具合にモンスターの造形から生態を考察しているそうだ。モンハンのモンスターデザイナーは大の爬虫類好きらしいので、結構合理的な生物デザインだったりするのだろうか?生物の進化は突然変異のもたらす偶然の産物。「こんな翼じゃ、飛べないよ!」と野暮なツッコミを入れるよりも、目の前にリオレウスとかが存在すると信じて語ったほうがずっと楽しそうである。
 ぼくは中学生の頃に特撮ヒーローなどを科学的に検証する『空想科学読本』にハマっていた。このシリーズは物理学を指針に人々の想像力を検証していた。先述のモンハンの本は、生物学を指針にした本なのだろう。きっと根底にある科学的なアプローチを大切にする思想は、どちらの本でも同じなのだろう。きっとぼくは『超生物学』も楽しめるだろう。
 空想に科学を持ち込むことで世界に広がりを持たせたり、楽しさを増やすこともできる。でも、やりすぎは良くない。近年、SFが勢いを失ってしまったのは科学的検証に力を入れすぎて、空想のアラ探しをする人が増えすぎてしまったせいだとも言われている。想像力を科学が縛ってしまう娯楽としては不健全な状態である。SFファンは科学が好きだから検証にも熱が入ってしまうのかもしれない。
 これはSFに限ったことではないだろう。剣と魔法のファンタジーでも同じことは起こり得る。
 人間文明のスタートは「火の発見」だとも言われている。闇を照らし、敵を遠ざけ、食事を効率化させた偉大な発見である。これが動物と人を分けた大きな転換点であることに異論はないだろう。でも、ファンタジーの世界のように火を吐く竜がそこら辺にゴロゴロいたら、火の発見というエポックは起こらないだろう(逆に考えると竜は獲物の肉を自分の火で焼いて食べる?)。
 また、トールキンの影響が大きいのかファンタジーの世界だとエルフが人間の10倍以上長生きしている。こんなにも長寿な生き物は、世代交代に時間がかかりすぎて進化に置いていかれそうである(実は子沢山で、500歳離れた長子と末っ子で種族が変わっているのだろうか?)。
 科学に加えて文化人類学とかを持ち出して本気に検証しだすと空想を持ち込む隙間がなくなってしまう。SFもファンタジーも、何も考えずに頭を空っぽにして楽しむのが一番だと思う。