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疑惑のビオラ

by 唐草 [2017/12/14]



 この季節、我が家周辺の住宅の庭先や花壇には多くのビオラの花が植えられている。一般的な黄色や紫などといった子供が使うクレヨンで描けそうな色の花だけでなく、高度な比喩を駆使しないと表現ができないような珍しい色のまで様々なビオラが枯れ葉色の住宅街に文字通り華を添えている。
 なぜ、どこもかしこもビオラばかりなのか。これには、ちょっとしたわけがある。
 住宅地の裏に広大な園芸花を育てている畑がある。この畑の主が、初冬になるとビオラの苗を特価で販売するのだ。園芸好きの人々がこぞって苗を買っていく。多くは近所の人々のようだが、中には車に乗って遠方からはるばる来ている人もいるようだ。看板や告知すら出されていないのに季節になるとどこからともなく大勢の人々が集まってくる。
 苗はとにかく安い。だいたい園芸店で売られている苗の半額ぐらいである。そして苗の質は高い。我が家の鉢に植えられた苗も冷たい風に負けずに元気に育って、小さいけれどしっかりした花を咲かせている。どう見ても、出荷できなかった残り物を素人相手に投げ売りしているという感じではない。初めから、高品質の苗を低価格で直接販売するために育てているとしか思えないのである。
 鮮やかなビオラの花を見てぼくは考える。
 なんで、こんな投げ売りみたいな方法で商売が成り立つのだろうか?と。
 そして、閃いた。
 脱税だな。
 件の畑で苗を購入しても、レシートも何もない。つまり、畑の主の頭の中以外に何株の苗が売られたかという情報無い。もし業者に卸していたら帳簿に記録が残るだろう。でも、素人相手の直接販売であればなんの証拠も残らない。いくら売ったかが分からなければ、課税のしようもない。それどころか、赤字で申告して税金から逃れることだってできるだろう。売上のすべてを懐に入れることができるのだ。実に賢いやり方だ。
 もちろん、これはぼくの邪推でしかない。なんの証拠もない。でも、ぼくがあの畑の主で同じ方法で商売をしていたら、帳簿には異常な数の廃棄ビオラが計上されることになるだろう。
 今日も、冷たい風に脱税(疑惑)のビオラが可憐に揺れている。