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分断されたアーカイブ

by 唐草 [2019/11/03]



 ぼくの部屋には、何年も使っていないハードディスクがいくつも転がっている。多くが昔使っていたPCから取り出されたものであり、当時のデータをそのまま記録している。データはバックアップしてあるので、アーカイブとしての役目はない。思い出が詰まっているからというあやふやな理由だけで、中身を消さずに残しているだけ。
 今日、必要に迫られ古いディスクの中身を消去して再利用しようとした。作業前に中身を確認したら古い猫の写真が数枚入っていた。すでにこの世を去った猫の写真は、ちゃんとバックアップされているのだろうか?バックアップを覗いたら同じ名前の写真が、機械的な命名規則に従って保存されていた。バックアップに抜かりはないようだ。
 数年ぶりに見たブサイクな猫の顔。美化された古い思い出とは違うリアルな姿が写真には記録されていた。久々に他の写真も見たくなった。そこで、バックアップの中からデータを見つけ出そうとしたのだが、うまくいかなかった。バックアップがあまりにも膨大で、求める1枚の猫の写真が何処にあるか皆目見当がつけられなかったせいだ。
 積まれたハードディスクを眺めていたら急に怖くなってきた。ディスクの数と同じだけの中身の分からないバックアップが存在しているという事実に気が付いてしまったからである。今までは、バックアップが存在しているという安心感の上にあぐらをかいているだけだった。でも、必要なものが見つけられないバックアップになんの意味があるのだろう?
 データ量が多いだけが厄介な点ではない。バックアップごとに保存ルールが違うことも混乱に拍車をかけている。その違いは、使っていたPCやカメラ、写真管理ソフトから生じている。写真のファイル名は連番だが、カメラが変われば番号はリセットされてしまう。OSごとに写真の保存場所が全然違う。アルバムソフトを使っていたころの写真は、年月日が名前になった多層フォルダの奥にある。プリントした写真をスキャンしたものもあった。さらに古い写真はMOのディスクイメージとして保存されていた。これでは探しようがない。
 1つ1つのバックアップが、それぞれが独自のルールを持っている。すべてのバックアップを並べて俯瞰してみると、人間には写真が無規則にばらまかれているようにしか見えない。一度、人間のために写真の整理を行う必要がありそうだ。そうしないと思い出の写真を見ることができない。このままでは多くの写真が存在していないのと同じだ。今のぼくは、実態の無いデジタルデータの膨大な量に溺れているような状態である。