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霜降り肉に負ける

by 唐草 [2018/01/04]



 最悪な目覚めだった。
 ちょっとでも体を動かすと盛大にゲロを吐いてしまいそうなぐらい気分が悪かった。目覚めた瞬間からこんなにも気分が悪いのは、何年か前に大阪旅行に行ったとき以来である。この状態を自力で脱するにはかなりの時間を要することになる。大阪の時と同じように一刻も早く胃腸薬の助けを借りる必要がある。
 大阪の時は嘔吐しそうな感覚の周期を読み取り、吐き気が退き始めた瞬間にコンビニへと走っていき、液キャベを買った。あの時の液キャベのおいしさは、今でも忘れられない大阪の想い出である。
 吐き気こそ大阪旅行の時と同じぐらいピンチであるが、あの時に比べれば遥かにイージーモードなシチュエーションである。今、ぼくが転がっているのは自宅のベッドの上。コンビニまで走る必要も無い。頑張って下階に降りて胃薬を飲めば良いだけである。3分もあれば十分である。だが、迂闊に動けば床を盛大に汚すことになるだろう。油断は禁物である。
 布団の中で小さく丸まりながら吐き気の満ち引きに注意を向ける。深く呼吸をするように心がけながら時を待った。
 波が引き潮に変わった瞬間、病み上がりのようにフラフラと起き上がる。そのままゾンビのような動きで階段を下りキャベジンを貪り食った。薬が効くまではちょっとしたピンチが続いたが、どうにかピンチを乗り切った。
 なぜ、今朝はこんなにも気分が悪かったのか?
 二日酔いか?そうではない。昨晩は酒を飲んではいないし、ぼくは二日酔いになるほど飲めない。これは胸焼けである。
 昨日食べた霜降り肉が原因に違いない。
 昨年は、何度か熟成肉のステーキを食べる機会があった。ぼくよりも年長者が多い食事会だったので、脂身を避けて赤身を選択するというオールドな注文が中心だった。歳を重ねると脂が辛くなるという話を散々聞かされていた。ぼくもいずれああなってしまうのかと思う反面、どこか他人事のように聞き流していたのも事実である。
 だが、実際のところ周囲の選択に助けられていただけだった。ぼくも気が付けば、霜降りよりも赤身が嬉しいお年頃(オッサン)になっていたわけだ。