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買っておけばよかった

by 唐草 [2019/01/22]



 ここのところIKEAの大きなサメのぬいぐるみが人気らしい。1mほどあるかなり大きなぬいぐるみだ。なんでもインスタで公開された写真が火付け役だそうだ。おかげで日本のIKEAでは、どこも売り切れ。検索すると売っている店がいくつか出てくるが、どれも転売ショップばかり。定価の2倍以上の強気な値段をふっかけている。「いいね」をもらうための出費として考えれば高くないという層が結構な数いるのだろうか?
 空前の巨大サメブームの到来をぼくは複雑な気持ちで見つめている。
 あれは、前の会社の備品をIKEAに買いに行ったときのことだからもう9年ぐらい前になるのだろう。IKEAでデスクとか棚とかを買っている最中に、ぼくは巨大サメぬいぐるみを見つけてしまった。海洋生物の流線型は、無駄がなく美しい。日本だとありがちな可愛くするためのデフォルメを施していないサメの形が本当に生き生きとして魅力的だった。そして大きさもいい。そこにサメがいるという確かなアクセントを空間に加えることができる。完全に一目惚れだった。
 当然のように会社の備品としての購入を主張したが、けんもほろろに却下されてしまった。売り場での議論とは言え、立場的には取締役会の決定だ。持株数は絶対なので決定には従わざるを得なかった。個人での購入も検討したのだが、あまりの大きさに持ち帰ることが困難だった。後ろ髪をひかれながら個人的な購入も諦めた。
 以来、IKEAに行くたびに巨大サメの購入を検討してきた。いつしか売り場の最後のキッズコーナーで巨大サメぬいぐるみと触れ合うのが、ぼくの楽しみにさえなっていた。何年もの間、売り場に置かれている巨大サメぬいぐるみは人気があるのだろう。
 去年の12月上旬にも巨大サメを購入しようか真剣に悩んでいた。今のオフィスに足りないものは「緑とモフモフ」だというのが、ぼくの主張である。モフモフ分を補給するために巨大サメを買おうと思っていた。狭いオフィスの小さな白いソファーを巨大サメのためのスペースに充てがおうと目論んでいた。
 その矢先に今回のブームが来てしまった。初めのうちは、「時代がようやくぼくに追いついた」とほくそ笑んでいた。ブームになっているし購入しても周囲からの風当たりは無いだろうと踏んでいた。ところが、いざIKAEに行こうとしてぼくの表情は強張った。日本全国どこのIKEAでも完売なのである。人気が出すぎるのにも困ったものである。なんだか長年の相棒が遠い存在になってしまったような、そんな喪失感に包まれている。