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硬い軟膏

by 唐草 [2018/04/18]



 不摂生な生活がたたったせいなのかは分からないが、恥ずかしいところに腫れ物ができてしまった。「出物腫れ物所嫌わず」なんて言葉があるように腫れ物は神出鬼没である。そして、一言で恥ずかしいところと言っても2通りの考え方がある。
 まず、目立つから恥ずかしいというパターン。顔に腫れ物ができてしまうと否が応にも目立ってしまう。ましてや鼻なんかにできてしまうと、さながらピエロのような風貌になってしまう。
 もうひとつの恥ずかしいパターンは、アンタッチャブルな場所に腫れ物ができる場合である。要するに普段は下着でガッチリガードしているようなデリケートなゾーンに腫れ物ができてしまったときのことである。
 今回のぼくは、後者である。尻に何かができてしまったようである。それも割れ目の近く。ただの腫れ物だとは思うのだけれども、自分では直接目視できない位置である。正体を確認できない気持ち悪さが残っている。だからと言って、ペロンっと尻を出して鏡の前に立つのはイヤだ。自分の締まりなく弛んだ尻なんてまじまじと眺めたいものでは無い。
 たぶん腫れ物だと仮定して、化膿止めの軟膏を塗ることにした。小さな子供だった頃は、外で転んだりして化膿するような怪我を負うことも少なくなかった。でも、大人になってからは滅多に化膿をともなうような傷を負うことはなかった。薬箱に入っていた化膿止めの軟膏を最後に使ったのはいつだろう?たぶん数年ぶりのはずである。
 使用期限が気がかりである。
 でも、他に変わるものもない。金属のチューブを力強く押して半透明の軟膏を絞り出す。こんなに硬く重い感じの軟膏だっただろうか?なんだかぼくの記憶にある化膿止めとは違うもののように感じられる。硬いとは言え、色に変化があるようには見えない。白い半透明のままである。
 まぁ、大丈夫だろう。あんこのように重い感じの薬を腫れた部分に塗っていく。自分の尻に薬を塗り込んでいる姿は、ある種の生々しさと弱さを併せ持つ間抜けな姿だろう。
 塗って15分ぐらい経った頃である。
 患部が、ズンズンというような重い痛みに襲われ始めた。薬を塗る前より痛い。
 これは絶対に体が発する危険信号である。やっぱりあの薬、ダメになっていたんだ。急いでトイレに飛び込んで、巧みな尻さばきでウォシュレットの水を本来とは異なる場所に当てて軟膏を洗い流した。またしても間抜けな動きをするハメになった。