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スーツはキライ

by 唐草 [2018/04/26]



 5年ぶりぐらいにスーツを着てネクタイを締めた。幸いなことに喪服ではない。常識的に考えてフォーマルな装いを要求されるシチュエーションに巻き込まれてしまったのだ。実に面倒だ。実にやっかいだ。
 普段フォーマルっぽいシルエットのジャケットを着て、スーツ向けの背中がツルツルしたベストを愛用しているのだけれども、本物のスーツは大キライ。スーツがキライと言うよりも、ネクタイがキライなのだ。ネクタイを締めるとどうにも喉を圧迫されているようで気分が悪くなる。そんな不快な装いをするのは、決まって組織のお偉方とか初対面の人に会う場合ばかり。服装の不快感と人に会う緊張感が、相互に作用し合ってぼくの気分をいつだって最悪なものにしてくれる。数学の世界だとマイナス×マイナスはプラスになるかもしれない。でも、メンタル面だと加算だとは思えないほどに負の気分を加速してくれる。
 そんな訳で、スーツに袖を通してネクタイを慣れない手つきで結ぶといつだって最悪の気分になる。
 今日は、多くの人の思惑が複雑に絡み合って無理矢理セッティングされた面接に行っていた。ぼくの欲望、組織の野望、現場の願望そんなものが複雑に絡み合っている。ハッキリ言って、まったく楽しいものでは無い。まぁ、楽しい面接なんて聞いたこともないけど。
 面接の途中でぼくの希望条件が通らないと責任者から告げられた。その時点で席を立ってもよかったのだが、場を設けてくれた方への恩義もあるので我慢した。とは言え、その事実を知ってからは、まったくやる気が無くなった。相手の顔色をうかがって言葉を取り繕うことをやめて「はいはい、そうですね」的な雰囲気で雑に対応した記憶しか残っていない。仮に面接をパスしても辞退だなと思いながらの面接。実に不毛。途中で笑いそうになって必至に堪えたのはここだけの秘密。口角が不自然に上がっていたかもしれない。
 これだけ書くと、いかにもぼくが高飛車に聞こえるだろう。
 たぶん、相手方もぼくにはよい印象は持っていないだろう。どう考えても人材と組織のマッチングができていないことは火を見るよりも明らかだった。ぼく以外の候補者全員に断られたとしても、ぼくに声をかけることはないだろうと言うぐらいに基本理念がずれていた。許容できないほどのミスマッチ。空席の方がマシだと考えるのが、組織全体を見据えた最善策だ。最後の場面で、各所の思惑が露呈した恰好だろう。
 ぼくとしては、まずあり得ないだろうが仮に面接をパスしても前提条件が希望に添わないので断ろうと考えている(強がり50%の言い訳)。相手側も、目標も能力も期待に添わないコイツだけは無いと思っているだろう。ぼくとしてもまたとないチャンスを形にできなかったのは残念だ。
 そして、またしてもスーツがキライになったのである。