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ワンタンメン

by 唐草 [2018/10/14]



 今日の昼食は、ワンタン麺だった。ワンタン麺は、みんなが大好きなラーメンとワンタンを合体させた美味しいとこ取りの料理である。大好きなものをひとつの皿にまとめたら美味しいだろうという食欲だけで考案された料理だろう。ぼくはカツカレーとかと同類の欲張り料理だと考えている。
 たぶんワンタン麺は日本人が作った魔改造中華のひとつだろう。本場の中国人がワンタン麺を見たらどう思うのだろう。ぼくたちがかき揚げうどんを見て食欲を覚えるのと同じように「そういう貪欲な組み合わせもアリだな」と認めてくれるのだろうか?それとも明太子クリームパスタに激怒したイタリア人のように反感を示し、新たな国際問題の火種となってしまうのだろうか?我々日本人がカリフォルニアロールに示すような嫌悪感が生まれないことを願うのみである。
 二国間の緊張まで話が拡大してしまったが、ワンタン麺を食べているときはこんなこと露とも考えていない。普段は、ただ無心に箸を動かすだけである。
 ただ、今日はちょっとだけ違った。少しだけ戸惑いのある箸の動きだったはずだ。
 ぼくが食べていたのは、ラーメン的なものの上にワンタンが浮いていたので広義には間違いなくワンタン麺であった。もし、今日の昼食の詳細を法廷などで精緻に述べるのであれば、もう少し言葉を選ぶ必要がある。
 肉ワンタン入りタンメン。
 これがぼくが食べていたものの正体である。
 タンメンと塩ラーメンの厳密な違いをよく理解していないのだが、野菜ベースのスープがタンメンの定義だと聞いたことがある。そんなタンメンの上にワンタンが浮いていた。つまり、ワンタンタンメンである。
 ワンタンタンメンという言葉の小気味よいリズム。思わず口に出したくなる響きであり、タルトタタンの親戚のような雰囲気もある。
 それを略してワンタンメンである。略した際の「タン」はワンタンの「タン」なのだろうか?それともタン麺の「タン」なのだろうか?トートロジー的な解釈を持ち出し熟考を重ねても結論に至るのは難しいだろう。
 結局、ズルズルと麺をすすりながら考え続けてしまった。レンゲで掬ったプルプルのワンタンを頬張っているときはワンタンの「タン」が優勢な気分になる。でも、野菜の甘味の効いたスープを啜っているとタン麺の「タン」が優勢だとしか思えなくなる。
 結局、どんぶりを空にしても結論は出なかった。この問題が国際問題へと発展しないことを願うのみである。