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決めてはモナカ

by 唐草 [2018/08/16]



 我が家の近くには、2件の食品スーパーがある。どちらも徒歩で行くのが苦にならないぐらい近い。ぼくが小さかった頃、スーパーと言えば近くても1km以上離れた店舗しかなかった。そのことを思い起こすと、今のように「お腹が空いたからお惣菜を買いに行こう」という生活スタイルが成り立つ今の環境のありがたみを思い出せる。まぁ、普段はすっかり忘れているが、便利になったものだ。
 2件のスーパーの利用頻度は大きく異なっている。より家から近い店舗Aを利用することが圧倒的に多い。店舗Aの横を通りすぎないとたどり着けない店舗Bは、お昼にボリューム満点なお弁当を買いたいときぐらいにしか使わない。距離にしてわずか100m程度しか離れていないが、その距離は消費者である我々の行動を決定づけるには十分な距離なのである。
 後発の店舗Bができて、もう何年も経っている。距離による優位性は絶対に揺らぐことはない。このまますっと近い店舗Aだけを使い続けるのだと固く信じていた。
 ところが、距離という絶対にも思われた優位性が覆されそうとしている。ここのところ、わざわざ遠い店舗Bまで足を運ぶ機会が増えてきている。
 優位性をひっくり返したものは、100円にも満たない些細な商品だった。
 チョコモナカジャンボである。
 廉価アイス四天王の一角でもある森永のチョコモナカジャンボ。日本中で世代を問わず根強い人気があると聞く。ぼくも大好きなアイスの1つである。その特徴は、他のアイスとは一線を画すパリパリのモナカである。
 近い店舗Aでチョコモナカジャンボを買っても、パリパリのモナカに当たることは滅多になかった。多くの場合、湿気って柔らかいモナカになっている。頬ぼってもパリッというモナカが割れる軽やかな音はしない。ごくありふれた普通のアイスモナカに成り下がってしまっていた。
 こうなってしまう原因は、店舗Aのアイス売り場の冷凍庫がフルオープンの古い形式だからだろう。多くの人が商品を取ろうと手を突っ込んで棚をかき回すたびに、ちょっと溶けてはまた凍るというのを繰り返しているに違いない。その結果、未開封であるが袋の中で結露が発生してモナカが湿気っているのだろう。
 一方、後発の店舗Bの冷凍庫はフタ付きのわりと新しいタイプである。しっかりとフタをされているので、溶ける心配はまったくない。だから、いつチョコモナカジャンボを買っても、ほぼ確実にパリパリのモナカに出会えるのである。
 こうして、ぼくはパリパリのモナカを求めて店舗Bで買い物をするようになった。パリパリのモナカが待っているという優位性は、夏だけの優位性かもしれない。でも、何年にも渡って続けてきた生活様式を一変させるには十分なインパクトなのである。