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再発!student打てない病

by 唐草 [2018/09/19]



 ぼくは、教育機関向けのソフトウェアの開発を請け負うことが多い。開発の多くは、特定の授業に特化したソフトウェア。こう言うと凄そうに感じられるが、裏を返すと汎用性ゼロとも言える。コードの再利用が難しい案件なので、会社だとやりたがらない仕事なのかもしれない。だから、ぼくのとこに案件が転がり込んでくるのだろう。
 ぼくの書いたコードを見てみると、教育機関向けのプログラムなので変数や関数に学校関連の単語をつけることが多い。機械的にプログラムのことだけを考えれば、変数や関数の名前なんてどんなものだって構わない。機械が理解できればそれで十分なのだから、変数aとか関数b()とかでまったく問題はない。でも、そこまで機械的なプログラムを書いてしまうと、今度は人間が理解できなくなってしまう。変数や関数の名前をわかりやすくつけるのは、すべて人間のためなのである。
 ぼくが書いているコードの中によく出てくる学校関連の単語は、以下のようなものがある。
 
・student
・subject
・group
・class
・teacher
 
 上記の単語をそのまま使うこともあるし、getStudentName()というような感じで他の言葉と組み合わせて使うことも多くある。これならどんなデータが入っている変数なのかや、なんのための関数なのかが名前から類推することができる。
 だが、これらの単語を使う際にぼくを悩ませている問題がある。
 ときどき、studentという単語が打てなくなってしまうのだ。ど忘れしてスペルが出てこなくなるのではない。間違ったリズムで打ってしまうのである。その結果、ぼくがstudentと打とうとしていたところすべてが、studnetになってしまう。Wordとかだとスペルミスに赤線が引かれるのですぐにわかる。でも、プログラム用のエディタは自然言語を打つためのツールではないので、構文ミスは指摘しても、スペルミスは指摘してくれない。見た目ではほとんど気が付けない小さなミスが、コピペによって潜伏期間の長い伝染病のようにジワジワと拡散していく。そして、プログラムを実行するときに何十行ものエラーと共に一気に問題が明るみに出るのだ。そのエラーを見て、ぼくはまたかと頭を抱える。これを今までに何度と無く繰り返してきた失敗である。
 今は、studentが打てない時期。今日だけで、数えられないほど間違えている。プログラムが動作しない理由の85%が、studentのタイプミスというありさま。不思議な事に他のタイプミスは発生しない。ミスをするときは、必ずstudnetになっている。脳内の運指を司る部分が、いつも同じ麻痺を起こしてしまうのだろう。
 なんの前触れもなく突然陥るstudent打てない病。罹患する理由は分からないが、治るときも唐突である。ある意味、発作的な症状とも言える。今ぼくにできることは、ただただ症状が去るのを待つだけである。