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外国人選手の口調

by 唐草 [2019/08/28]



 ぼくがF1好きだ。モータースポーツ好きの人間は、他のスポーツファンとは少し違うかもしれない。サッカーファンだったら「マンUが好きだ」とか「バルサが好きだ」とかと言った具合に贔屓のチームがあるだろう。また、チームに関わらずどこに移籍しようとも「ロナウドを応援する」というように注目している選手がいるだろう。同じようにモータースポーツでもドライバーやチームを応援する人も多い。
 でも、選手やチームを応援するのと同じようにレースカーやエンジンを応援している人もいる。「ホンダのエンジンだから」とか「マシンデザイナーがエイドリアン・ニューウェイだから」というのが声援を送るモチベーションになっているのだ。サッカーに例えたらボールに情熱を注いだり、「ナイキのユニフォームだから」という理由で贔屓のチームを決めるようなも。サッカーの例えだとイカれているようにしか見えないが、競馬で厩舎や調教師で贔屓を決めているのに近いと言えば少しは同意してもらえるかもしれない。
 今季、ぼくがレッドブルF1チームを応援しているのは「ホンダエンジン搭載のニューウェイ設計マシン」だからだ。モータースポーツならではの贔屓の決め方である。
 日本製のエンジンを積んでいるとは言え、レッドブルF1はイギリスのチーム。チーム公式の発表はすべて英語。また、F1はヨーロッパで人気の競技なので、ゴシップを含めた多くのニュースが英語やイタリア語などヨーロッパの言葉で発信されている。極東でネットだけを頼りにF1ファンをやっているぼくのもとにやってくる情報は、大勢の人の手を経て日本語に翻訳された情報ばかりである。F1ドライバーが英語で話した言葉がイタリア語に翻訳されてイタリアのニュースサイトに掲載されて、それを和訳した日本の記事を読むなんてことが良くある。
 その結果、元の発言にあったある言語特有の皮肉とかが、比喩ではなく事実として報じられることがある。場合によっては悪意ある訳をしてフェイクニュースすれすれの記事を作っていることさえあるらしい。でも、困った問題はこれだけじゃない。同じ選手の発言でも翻訳する人によって雰囲気が大きく変わることがある。同じ選手の発言なのに、あるときは優等生、別のときは好戦的な野獣のように語ったかのように報じられる。"I"という言葉をどう訳すかでさえ雰囲気が変わる。ましてやすべての言葉を自由に置き換えられるんだから雰囲気なんて作りたい放題だろう。
 ぼくのイメージする選手の口調や雰囲気は、多くの記者のフィルターを経た末の出し殻のようなものなんだろう。そうは分かっているが英語力が低いので、今日も虚像を追いかけるだけなのであった。