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モンゴ

by 唐草 [2019/09/18]



 いったい今日だけで何回、mongoとタイプしただろう。数えたら確実に3桁となる。
 イカの名前か草原の国を連想しがちなmongoという単語。あいにく、どちらでもない。ぼくがストレスで胃を痛くしながらタイプしまくっていた言葉は、データベースの名前なのである。
 データベースと言うとSQLという呪文のような命令文でデータを操作することが多い。コンピュータのコマンドなんてどれも呪文のようなものだが、SQLは入れ子構造になっているので一段と読みにくい印象がある。ぼくも日々、大魔道士になったつもりで難解な呪文を紡いで仕事をしている。
 今日ぼくの前に立ちはだかったのは呪文で操作するタイプのデータベースではなかった。それがMongoDBだ。
 実は、昨年の8月から何度もMongoDBに振り回されてきた。振り回されるタイミングは、まるで天災のように忘れた頃にやってくる。だから毎回乏しい知識とおぼつかない操作で巨大なデータの塊と格闘することになるのだ。そして、ボコボコにされる。
 今回も、ぼくを大いに振り回してくれた。たぶん、今までで一番の激戦になっただろう。戦いのさなかのぼくの立ち居振る舞いは、涼しい顔してキーボードを「カチャカチャ、タッーン」と叩くクールなハッカーとはかけ離れていた。何もかも上手くいかず胃痛に襲われ胃薬を飲んでいた。果てなき試行錯誤にギリギリと歯ぎしりすらしていた。ずっと画面を睨みつけていたので、目だけはギラギラと不健康な輝きをたたえていたことだろう。
 MongoDBは、MySQLなどに比べるとマイナーなソフトだ。用途が特殊なせいもあるだろう。だからネットで調べても、あまり情報が出てこない。出てきたとしても、英語か機械翻訳された不自然な日本語のドキュメントばかり。情報不足という現実に加えて、ぼくの語学力不足と知識不足の三重苦が解決を更に遠いものにしていた。
 藁をも掴む思いで、思いつくすべてのことを試したと思う。その過程でコマンドを実行したり設定ファイルを書き換えたりするたびにmongoと打っていた。右手の負担が大きい言葉のせいか、いつも以上に肩が凝った。
 午前3時から初めて、途中でゲーム休憩とおやつタイムは十分に確保しているが、午後10時までの長い戦いとなった。もうmongoという字面を見たくない。モンゴウイカもモンゴルもだ。