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記憶が消えた

by 唐草 [2019/01/24]



 ここのところ毎日更新をキープできている。変な話なのだが、忙しいからこその毎日更新なのだ。まとまった時間を確保しにくくなったので、每日ちょっとした空き時間を見つけてコソコソと記事を書くようになった結果なのである。要するにサボりの賜物ということ。
 今は、仕事で1日中PCの前に張り付いている。背後からジロジロとPC画面を覗かれでもしない限り、本来の業務で文章を打ったりプログラムを書いているのか、はたまたサボって趣味のブログを書いているかを判断することなどできないだろう。
 だから今日もネタを思いついた瞬間にテキストエディタを起動させようとした。
 まさにちょうどその時だった。PCからメールの受信を知らせる音がした。テキストエディタのアイコンへと一直線に進んでいたマウスカーソルは、くるりと向きを変えて切手のアイコンの方へと進んでいった。
 届いていたのは読むに値しない宣伝メールだった。詐欺やエロの類では無いせいか迷惑メールフィルターをすり抜けてぼくのところへ届いたようだ。
 さぁ、気を取り直して今日の記事を書いてしまおう。今度こそテキストエディタのアイコンをクリックして、まっさらな画面を表示した。
 キーボードに指をかけた途端、ぼくは絶望的な気分になった。またしても何を書こうとしていたかまったく思い出せなかったのだ。
 十数秒前、つまりメールに目を通す前は、オチまで考えた文章が頭に浮かんでいた。最近PCネタが多いので、オタク臭いネタは避けて身の回りのことを書こうと考えていたことは覚えている。だが、それが何だったのかサッパリ思い出せない。
 まるでしばらくの間パラレルワールドへ迷い込んでしまったかのように記憶がすっぽりと抜け落ちていた。ひょっとしてネタを思いついたという錯覚に囚われているだけなのだろうか?忘れてしまったのか、それとも始めから思いついていなかったのかの判別もできない。まるで脳の中に濃い影が差して一部だけ隠されているような気分である。数ヶ月に一度起きるこの現象は、脳の病気ではないかと不安がこみ上げてくる。
 一瞬の閃きってなんて儚いものなのだろう。ちょっと意識が逸れただけで、始めから存在していなかったかのように霧散してしまった。でも、短期記憶が完全に消去されるとは思えない。記憶を引き出すための綱が切れてしまっただけではないか?
 メールを確認する前の記憶は残っている。その記憶に沿って行動を再現すれば、記憶を取り戻せるのではないだろうか?まるで巻き戻し映像を見ているかのように自身の行動を再現していった。タブレットを手に持った瞬間、カチッと何かがハマる音が聞こえても不思議はないほどに頭の中で何かがつながった。すべての記憶が流れ出るように戻ってきた。
 良かった。ネタを思いついたという記憶は錯覚ではなかった。すごくくだらないことだけど思い出せて心から安堵している。思い出したネタは、明日にでも。今日は、記憶を取り戻すこの貴重な体験をネタにしよう。ぼくは転んでもタダでは起きないのだ。