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情報ネットワークのテスト

by 唐草 [2019/07/31]



 バスの中で大学生が熱心にプリントを見つめていた。7月も終わろうとしているこの時期はテスト期間だったはず。直前まで勉強に励むのは結構だが、車中でプリントを眺めていて車酔いしないのだろうか?ぼくが同じことをやったら、テスト前にゲロを吐くだろう。
 学生のプリントには「情報ネットワーク」というタイトルが付けられていた。ぼくの専門に関わる内容なのでついつい覗いてしまった。中身は、明らかにコンピューターやネットワーク専攻の学生の基礎となるしっかりとした内容だった。空欄があってそこに赤ペンで答が記入されているのは、今も昔も同じである。
 コンピューター勉強で赤ペンを使った暗記的な勉強と言うとそれだけで否定的な意見が飛んできそうだ。でも、コンピューターの勉強といえども暗記が必要な部分がある。より高度な内容を効率よく学習するための呪文を知るようなものだ。重要なのは論理的な思考能力かもしれないが、先人の知恵を吸収することも同じぐらい重要。その時に必要な知識は、ときに語呂合わせを含めた暗記が必要になる。それが一番の近道なのである。
 ぼくもプリントを覗きながら解答を思い浮かべていった。OSI参照モデルに基づくプロトコルの内容だ。学生の時分、ぼくも意味を理解せぬまま「あぷせとねでぶ」の語呂合わせ(何の語呂?)で階層構造を覚えたりしたものだ。プリント内の図が7層になっていないので、TCP/IPプロトコル・スイートの話だろう。一瞬見える図だけで、こんなにも多くの情報が読み取れる。これが勉強の成果である。
 ぼくがこのテストをこのまま受ければ、たぶん30点ぐらいの得点を叩き出すことができるはずだ。無勉強で30点なんてすごい!と判断されたら、鈍いぼくとてバカにされているとすぐに分かる。
 ぼくはWebアプリケーションを書き、サーバを管理することを生業としているネットワーク系エンジニアの端くれである。でも、大学生の基礎試験を受けたら3割ぐらいの成績しか取れないに違いない。
 それには訳がある。
 ネットワークは階層ごとに独立している。有線LANと無線LANでインターネットの使い方が変わらないのも階層の独立性のおかげである。同じように開発や管理も階層に支配されている。ぼくが扱うのは、最上位階層であるレイヤー7ことアプリケーション層だけだ。電子の速度による最大ケーブル長の制限とかは知らなくて問題ないのだ。
 何が必要で、何が不必要なのか。それを知るのもまた勉強である。ただ、初めから知識を絞ってしまうと学生の可能性の芽を摘むことになる。学生は頑張って全部覚えてくれ。そして、道を選び、自分の詳しいことだけをドヤ顔で語るのだ。