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冬将軍の反撃

by 唐草 [2020/02/06]



 先月の中頃に「今年は暖冬だから使い捨てカイロを使っていない」と書いた。その後も冬にしては暖かい日が続いていた。昨年買って半分残っていた使い捨てカイロは、このままひとつも減らずに冬は終わるだろうと信じ切っていた。さらに、次の冬まで使わず放置していてダメになったりしないだろうかと杞憂なことすら考えていた。
 だが、ぼくの願いに近い予想は見事に外れた。
 なんなんだ、今日の寒さは!?北の空でくすぶっていた冬将軍が、伝家の宝刀の氷の刃を勢い良く抜き、不敵な笑みを浮かべながら反転攻勢に出たかのようである。
 朝の天気予報を見ていたら7時半で1℃台の気温だった。目の覚めるような気温である。その数字を見るなりぼくは、使い捨てカイロを取りに家の中を走った。そして、何の躊躇もなくへその上辺りに貼り付けた。使い捨てカイロの初陣は、この冬一番となりそうな寒い寒い朝となったのだ。
 なまじ昨日まで暖かかったので、体は冬将軍の本気の攻撃に耐えられるほど仕上がっていない。準備不足の守備隊はなすすべもなく凍てついた寒さに蹂躙されていく。ヒートテックの上下に使い捨てカイロという完全防備のはずなのだが、ぼくは今にもガチガチと震えそうだった。
 気温の低さもさることながら、風の強さも凶悪だった。冬将軍は北風に乗って急襲してきたのだ。目を開けているのが辛いほどの風は、厚手のコートの裾さえも易々とはためかせる。そんな風の中では、ちょっと歩くだけでも手袋が欠かせない。耳あて代わりのタオル地ゴムバンドで耳だけでなく顔中覆いたくもなる。少しでも肌が露出している部分から、どんどん体温が奪われていく。
 今日の寒さは、寒いという感覚よりも痛いという感覚に近かった。冷たい水で手を洗ったときと同じような感覚である。刺すような寒さというのが、比喩でも何でもなく現実に起こることをそのまま語っているだけだということを思い出させてくれる寒さである。
 今日の反省は、使い捨てカイロを腹にしか貼らなかったことだ。明日も今日と同じぐらい寒いらしい。明日は、贅沢にも腹と腰に1枚ずつ貼っていこう。昨日まで使わずに終わると思っていた使い捨てカイロなのに、今日は残りの枚数でこの冬を乗り切れるか心配しているのである。一寸先は氷の中である。