カレンダー

2020/03
    
       

広告

Twitter

記事検索

ランダムボタン

ねじねじとの戦い

by 唐草 [2020/02/21]



 今日は頭を使うより、無心で指先を動かしたい気分だった。いつもにまして頭が動いていないのでPCの前に座っていても何もできなかった。脳波が止まって反射のみで動いているゾンビのようなものだ。
 こういう日に無理していつもと同じ仕事をするのは危険だ。目をつぶって仕事をしていたのかと疑われるようなミスをしてしまうに違いない。その結果、将来に禍根を残す損失が生まれるのは目に見えている。急がば回れの精神で無理をしないのが、長期的な正解のはずだ。
 何をして時間を潰そうか。塗り絵をしたいが、サボりが一目瞭然だ。編み物にリラックス効果があるらしいが、これもサボりがバレる。仕事をしているように見えて、それでいて頭を使わず、指先だけを動かしていられることなんてあるだろうか?
 半分寝ていた頭に電流が流れるような閃きがあった。
 サーバ室の片隅に廃棄予定のケーブルがうず高く積まれている。不要になった数十本の電源ケーブルやLANケーブル、その他得体のしれないケーブルである。無計画にケーブルを積み重ね、無造作に移動を繰り返した結果、ケーブルは互いに絡み合って巨大な塊を形成していた。それは、カラフルで巨大な鳥の巣のようであった。これを解いて時間を潰すのだ。
 サーバ室へ向かうとケーブル塊の前に椅子を置いてどっしりと腰を据えた。横には、廃ケーブルを仕分けするための大きな段ボール箱が3つ置かれている。網にかかった魚を回収する漁師のような気分になる光景であった。
 ケーブル塊は、悪意を持って結び合わせたのではないかと思うほどに絡まっていた。ほどこうとして引っ張ると、別のことろが固く結ばれてしまう。ケーブルが抜けないようにある爪が、他のケーブルと絡み合っている。3本ぐらいのケーブルを結束バンド束ねているものもあり、束ねた隙間に別のケーブルが挟まって複雑さを増していた。指も容易に入れられない絡まりである。
 はじめの1本が抜けるまで5分ぐらいかかった。1本抜けたからと言って、手品のようにスルスルと解けいていくこともなかった。最後の1本まで、泥臭く指を動かし絡まりをほぐしていくしかなかった。
 廃棄待ちケーブルを解くという生産性のない行為に2時間以上費やすこととなった。多くの人にその姿を見られたが、サボりだと責められることはなかった。最高の暇つぶしである。とは言え、毎日こんな作業に従事したくはない。サボりだから楽しいのだ。