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ドラクエが悪い

by 唐草 [2020/09/21]



 9月に入ってから10年前のPCゲーム『Fallout New Vegas』で遊んでいる。久しぶりに古いゲームで遊んでみようというのではなく、これが初めてのプレー。
 ぼくにとって『Fallout New Vegas』は、4つの目のFallout。ゲームシステムや世界観には新鮮味を感じてはいないが、今までで一番楽しめている。ゲームに対する価値観がガラリと変わったからだ。変わる瞬間にガチッと錆びた大きなスイッチが動く音がした。
 ぼくはドラクエで育った。骨の髄までドラクエが染み込んでいる。だからどんなゲームで遊ぶときもドラクエを攻略するときの発想になる。それは、どんなに面倒で理不尽な依頼も絶対に断らない勇者としての振る舞いだ。だから、Falloutでもskyrimでも御用聞きのようにせっせと依頼をこなしてモンスターを倒したりアイテムを回収したりしていたし、そうするのが当然だと考え疑いすら持たなかった。たとえその行動が悲劇的な結果をもたらしたとしても。
 でも、『Fallout New Vegas』でギャングの門番に賄賂を要求されたときに気がついた。目の前の選択に対して「NO」と答えたときの世界の広さを。
 ぼくは素早く銃を抜くと、ためらわずに門番の頭を撃ち抜いた。
 「NO」と答えても良いんだ。その発見は雲間から差し込む光のようにぼくを照らした。「NO」と答えることで多様な選択が生まれることに初めて気がついたのである。交渉スキルを活かして賄賂の額を小さくしたり、話術で騙したり、鍵を盗んでもいい。勇者的な発想しかなかったぼくには、「NO」の先にある多様な選択肢がまったく見えていなかった。
 門番の頭を撃ち抜いたとき、ゲームの中の自由を初めて手に入れた。そして今、初めての自由を片手にゲームを楽しんでいる。
 日本人は、Falloutのような自由度の高いゲームで悪人プレーをすることが少ないと言われている。これを見て「日本人は民度が高い」とか考えるのは早計だろう。幼い頃からの勇者教育が視野を狭めていて、「NO」を突きつけるという発想が無いだけなのかもしれない。
 だから今日は声を大にして言わせてもらう。
 「みんな、ドラクエが悪い」と。
 まぁ、DQ12が出たら発売日に買うけどね。