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40分待ち

by 唐草 [2021/03/25]



 昨日、混雑を避けるために早めに帰宅をしたことがかえって裏目に出てしまった。
 駅に着いたとき電光掲示板に表示されていた次の発車時刻は、10分以上前のものだった。この表示を見れば、アナウンスを聞かなくたって電車が遅延していることが分かる。ぼくの利用するJR中央線で遅延といえば、85%ぐらいの確率で人身事故。悲しい事故かもしれないが、いつもの厄介事ぐらいにしか感じない。
 ホームには次々と人がやってきて、ソーシャルディスタンスをキープする空間は既になかった。ぼくは少しでも空いている場所を求めて人の間を縫うように歩を進めていったが、どこも同じように人で溢れていた。多くの人が遅れることへの詫びや予約のキャンセルを電話口に述べている。その声は、疲れてもいるし、苛立ちの色もあった。
 しばらく待っていると状況を告げるアナウンスがあった。その内容は、どうせ人身事故だろうと思っていたぼくの予想を裏切るものだったし、初めて聞く内容だった。
 「立川-日野間で複数人の路線立ち入りがあったため安全確認をしております」
 高架化が進んだけれどまだ踏切の残る中央線では、路線立ち入りによる運行中止は珍しくはない。ただ「複数人」といアナウンスはいまだかつて耳にしたことがなかった。どんな状況ならば複数人が同時に路線に立ちいってしまうのだろうか?ぼくには想像もできなかった。
 謎を残したまま電車は40分間動かなかった。
 家に帰ってからSNSを中心に調べてみたら、鉄道遅延の原因が書き込まれていたし、目撃映像もアップされていた。
 原因は、撮り鉄が多摩川橋梁に登ってカメラを構えていたことだった。映像では、橋梁上で電車が止まると数名の人影がボロボロと落ちるように橋から降りていた。別の話によると運転手が怒鳴っていたらしい。
 今までにも様々な理由で鉄道遅延に巻き込まれてきたけれど、昨日ほど利己的でひどい理由はなかった。知れば知るほど腹が立つ。JRには民事と刑事の両方で過激化した撮り鉄を訴えて尻の毛一本残さないほどの賠償金を毟り取ってもらいたい。