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CATを捨てる

by 唐草 [2021/03/29]



 うず高く積まれたLANケーブルの山から古いものを捨てる作業に取り掛かっていた。地味な作業だが、酔っ払った蜘蛛が張った巣のようにケーブルが無秩序に絡まった備品置き場に秩序をもたらすためには欠かせない作業である。
 今のLANケーブルは6世代か7世代が中心。高速通信用7世代には馴染みはなく、長らく6世代がLANケーブルの顔となっている。分かりやすくするために「世代」と書いたが、正式には「カテゴリー」という。略して「CAT」。6世代なら「CAT 6」となる。ぼくは心の中で「ねこ6」と読んでいる。
 新たな機器を導入するたびにスパゲッティーのようなケーブルの山からLANケーブルを抜き取って使っている。間違って古いCAT 5ケーブルを使ってしまうとそこだけ通信速度が1/10になってしまう。そんなことが起きたらもはや事故だ。
 安全のためにCAT 5を撲滅するのがぼくの使命だ。
 見た目は全く同じケーブルなので、違いを見抜く方法は1つしかない。ケーブルに刻印されたCAT 5の文字を見つけるだけ。簡単そうに聞こえるかもしれないが、これがなかなか骨の折れる仕事。ケーブルにはカテゴリー以外にも色々書いてあるので全部読まないと正体が分からない。ツイステッドケーブルはねじれているので、印字された文字も歪んでいる。ねじれに合わせてケーブルを回さわないと文字が読めない。古いケーブルなので印字がかすれている。メーカーごとに記載の仕方が異なる。CAT 5Eという紛らわしいものある。このような数多の障壁がぼくの前に立ちはだかっている。
 鉛筆よりもずっと細いケーブルに書かれた小さなドット印字の文字を黙々と読んでいく。
 CAT 5ならゴミ箱。CAT 5Eより上の世代なら備品箱へ。ひよこ鑑定よりずっと簡単な仕事のはずなのに全然進まない。
 最終的に40本ぐらいのケーブルの中から7本のCAT 5を捨てた。いらないものを捨てると大抵の場合、晴れやかな気分になるのだが今日は全然ダメだった。CATを「ねこ」と読んでいるせいなのだろうか?