カレンダー

2021/05
      
     

広告

Twitter

記事検索

ランダムボタン

ベストな通勤時間

by 唐草 [2021/05/27]



 何年も前からオフピーク通勤というアイディアが語られている。すし詰めという例えすら生ぬるい殺人的な朝の通勤ラッシュの中に身を投じるより、ちょっと早く家を出て快適に通勤しよう。考え方としては理にかなっているが、理想と現実は大きく離れたまま。コロナ禍に陥って密を避けることが日常になった今でも、オフピーク通勤はまったく実現できていない。
 みんなそんなに混雑が好きなのか?と思いたくなる光景が今日も繰り返されている。
 結局の所、オフピーク通勤は自分以外の誰かにやってもらいたいと皆が考えているのだろう。自分はいつもどおりギリギリまで布団にくるまっているから、誰かが早起きして頑張ればいい。全員が横並びで出勤時間を早めてしまったらオフピーク通勤の意味がなくなるので、自分は社会のことを考えて遅番を担当するよと考えているのだろう。誰だって損な役回りを積極的に買って出たくはない。利己的な現代人がオフピーク通勤を実現させるのは相当難しそうだ。
 それでも早い電車に乗っている人々もいる。実はぼくもそのひとり。とは言え、誰かのために早起きしているのではない。ぼくは吐き気をもよおすほどに混雑を嫌悪しているので、自分の心と体の健康を守るために早めに動いているに過ぎない。利己的な早起きである。
 では、どれぐらい早くに動くべきなのか?少しでも空いている時間を求めてぼくの出勤時間は、この5年で30分ぐらい早くなった。先日、試しに更に10分早く家を出たことがあった。
 早ければ早いほど空いているというぼくの経験が正しければ、朝から悠々と座って通勤できるはずだった。ところが、読みは大ハズレ。早すぎて中高生の通学時間に重なってしまったのだ。いつもよりずっと混んでいたし、駅は賑やかを通り越してうるさいに近い状態だった。
 数年かけて自然とたどり着いたいつもの電車が一番空いていた。これは通勤と通学の境にあるエアポケットのような時間に街を走り抜けるダイヤなのだろう。
 オフピーク通勤は、「早ければ早いほど良い」と机の上で考えるよりもずっと複雑な話のようだ。