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Deleteに託す

by 唐草 [2021/07/01]



 茶軸や黒軸で有名なキーボードスイッチ「CHERRY MXスイッチ」の耐久性は、公称5,000万回となっている。1秒に1回押したとしても579日間、つまり1年7ヶ月に渡って連打しても平気という計算になる。PCゲームで遊ぶのであれば特定のキーだけ酷使することもある。それでも5,000万回を達成するのは容易ではない。ましてや文字を打つだけのぼくが5,000万回に到達するのは、永遠に到達しない極地のように思える。
 ぼくのキーボードは購入から11年を超えている。計算上は5,000万回に達したキーはないはずだ。
 それでも最近の不調は耐久限度突破が原因なのだろうか?そうだとすれば、バックスペースが一番調子が悪いという事実はぼくを大いにへこませる。打ち損じや文章の修正を5,000万回以上繰り返してきたという何よりの証拠とも解釈できるからだ。
 バックスペース以外で調子が悪いのは"I"と"O"。母音なので打つ回数が多いし、バックスペース同様に右手で力強く打っている。5,000万回までいかないにしても耐久性の壁を突破したことが不調の原因だと考えても不自然ではないようにも思える。
 発生している不調は、1回押しただけなのに2,3回入力されるという厄介なもの。1文字消そうとしただけなのに、予想に反して文字がドンドン消えていく。タイプミスや文章の修正がなければ気が付かない不調とも言えるが、ぼくの能力では一発で完璧な文章を打つなんて不可能。それは世界から争いをなくすのと同じぐらい困難なことだ。
 ぼくは、この不調に対してバックスペースを別のキーに割り当てることで対処を試みた。右隣にあるDeleteのキーバインドをバックスペースのコードで上書きした。これでバックスペースを使わなくても良い。
 理屈は完璧だったが、長年染み付いた指の動きがDeleteを押してくれない。無意識のうちにバックスペースを叩いている。しかも、それに気づくのは意図せず文字が消えたときというありさま。せっかく対策を講じたのだが、柔軟性を失ったぼくの体が新しい仕組みを一向に受け入れてくれない。