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近隣番組

by 唐草 [2021/10/12]



 コロナはぼくたちの日常を小さくした。不要不急の外出もしないし、買い物は近場で済ます。通勤しても寄り道せず直行直帰。無駄どころか、余裕と楽しみさえ削ぎ落としたような毎日。行動範囲は手を伸ばさなくても届くぐらい狭くなった。
 これは、メディアを通して繰り返された自粛要請に従った結果である。引きこもりのぼくには苦ではなかったが、生きがいを見失った人もいるに違いない。
 自粛要請は、メディア自身の首を締めているようだ。視聴者に自粛を訴えかける手前、大手を振って遠方へのロケに行くのが難しいのだろう。最近の在京局の番組を見ていると都内のロケが多い。
 コロナ前のテレビでは、日本中どころか世界の至るところでロケをしていた。ところが、今や関東のテレビで流れているのは東京周辺のロケばかり。珍しく地方を扱っているかと思ったら出演者がマスクをしていないので、すぐに再放送だと分かる。
 取り扱う範囲が劇的に狭くなったことで、番組はつまらなくなっただろうか?
 そうは思わない。むしろ広くロケをしていた頃よりも、今のほうが面白い。
 今、旅番組で東京を扱うと狭い範囲であってもびっくりするようなマイナーなスポットを紹介してくれる。以前の旅番組はさまざまな所へ行くけれど、有名観光地や温泉など無難なものばかり。どこに行っても同じような番組になっていた。
 旅番組以上に面白くなったのは動物番組。世界を旅して珍しい動物を紹介してもらっても実際にその動物を見る機会はない。ある意味、ゲームに登場する架空のモンスターを紹介しているのと変わりない。また番組の切り口は、大抵の場合弱肉強食という感じでもう飽き飽きしていた。一方「地元にこんな動物がいるよ」紹介されたら、実際に見にいける。先日も近くの駅が取り上げられていて驚いた。また、恥ずかしいことに地元の生態系なんて全然分かっていないので、サバンナのライオンの暮らしより新鮮味を感じる。
 限られた狭い範囲で番組を作ろうという努力が、新たな成果を生んでいる。現状を良い制限だと前向きに捉えられる人が、次の時代を作るのだろう。