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剥がれないのが怖い

by 唐草 [2022/03/11]



 指先を削いでしまってから2週間が経過した。出血にビビったせいで過保護な対策を講じて治療に専念した。切った直後の数日は、このぼくがゲームを我慢したんだからちょっとした事件だ。そのかいあって腫れも、再出血もなく傷は癒えた。
 と思うのだけど、実はまだ良くわかっていない。まだ絆創膏が剥がれないのだ。
 先日、無理に絆創膏を剥がして傷が開くのが怖いと書いた。あのときは、まだヒリヒリと痛むこともあった。だから慎重に慎重を重ね絆創膏を守ることに努めたし、焦らずとも自然に剥がれるだろうと考えていた。
 それから4日が経過したが、いまだ絆創膏は親指にへばりついたまま。ゴム手袋での保護も止めて数日経つ。親指をかばう動作も減って、普通に物をつまんだり、ひねったりするようになっている。ゲームだっていつも通り遊んでいる。怪我前の日常が戻っているのに、絆創膏だけが怪我を忘れるなと言わんばかりに何気ない動作に水を指してくる。
 なんで、こんなに剥がれないのだろう?本当に皮膚に癒着してしまったのだろうか?
 剥がすことへの不安は、剥がれないことへの不安へと変容している。
 ぼくの生き血をたっぷり吸ってパンパンに膨らんでた絆創膏だが、毎日少しずつ小さくなっている。ブヨブヨだった部分が痩せてシワシワになっているし、絆創膏の端から粘着質も漏れてもいる。指紋の位置で確認すると毎日0.5mmぐらい縮んでいる。まるで放置したリンゴが徐々に水分を失っていくようだ。
 過保護に扱っていたからとは言え、2週間も絆創膏が剥がれないなんて思いもよらなかった。もし「絆創膏維持選手権」が開催されたら上位に食い込めそうだ。
 指先を押しても違和感はほとんどないし、熱も持っていないし、変な臭いもしない。ほぼ確実に治癒している。もし、別の誰かから「2週間絆創膏が剥がれないんだけどどうしよう」と相談を寄せられたら「もう剥がして大丈夫だ」と断言できる状態だ。
 他人には合理性だけで結論を下せるのに、自分のことになると杞憂と呼ぶべき小さなリスクを恐れ剥がすのを尻込みしてしまう。チキンだな。