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散歩と野菜

by 唐草 [2022/05/24]



 社会人の生活なんてものは、週単位の繰り返しに過ぎない。心躍るドラマチックな出来事なんて滅多にない。
 事実、ぼくの生活だって単調な週単位の繰り返し。大人になっても学生時代と同じように時間割に縛られているようなものだ。この数年は教育に携わっているので、比喩ではなく本当に時間割に縛られている。
 ぼくの週単位のルーティンで欠かせないのが火曜日の散歩。水曜日の朝は早いので前日の晩に気持ちよく早寝するために散歩を始めたのがきっかけ。以来、数年にわたって火曜日の散歩を日課ならぬ週課としている。今では、水曜日に早起きする必要がない週でも散歩に出ている。
 散歩は、曜日が決まっているだけでない。様々なことがルーティンとなっている。散歩に出る時間もほぼ同じだし、コースも決まっている。睡眠を心地よくするための軽い疲労を求めているのなら、ここまで規則正しく歩く必要はない。それなのにワガママで臆病な犬を散歩させるように規則正しく歩いている。
 機械じかけのように歩くのには、ある楽しみが関係している。それは規則正しく、しかし同時にある程度の間隔をおいて歩かなければ気づきにくいこと。
 その楽しみは、日々変化する自然の移ろいを確認すること。自然というと野山や水辺を思い浮かべるかもしれないが、ぼくの場合は違う。
 近所の小さな畑を見るのを楽しみにしている。そこはヘクタールではなくただのアールで十分に広さを示せる小さな畑。でも、どのシーズンも丁寧に手入れされており、旬の野菜が元気に育っている。そして、プロの農家らしく畝ごとに植え付け時期をずらしているので、畑を見渡すとコマ撮りのように野菜の成長過程を眺めることができる。
 今の季節はトウモロコシ、キュウリ、ナス、枝豆といった夏野菜がすくすくと育っている。5月の陽気と陽の強さは、わずか1週間で大きな変化をもたらす。この変化を眺めるのが、驚きに満ちていて本当に楽しい。自然のたくましさと人間の知恵を同時に感じられる。
 繰り返すからこそ気づける変化がある。そんな訳で、毎週火曜日の畑を巡る散歩がぼくの小さいけれど欠かせない楽しみなのである。