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見知らぬ駅で

by 唐草 [2022/05/25]



 先日、乗り慣れたJR中央線のいつもの駅でいつもの車両のいつもの扉からいつもの時間にいつもと同じように降りた。それなのに目の前には見慣れぬ光景が広がっていた。
 寝ぼけて違う駅で降りてしまったのか?それとも事情があって違うホームに停車したのだろうか?慌てふためくぼくを尻目に、周囲の人々は朝の駅らしく皆早足で歩いている。まるでぼくだけが知らない駅に降ろされてしまったようだ。目の前に広がる見慣れぬ景色は、素直な驚きだけでなく同時に自分だけが取り残されたようで足元がおぼつかない気持ちにさせる。それは不思議と不快ではない。どこかで経験したワクワクの前触れのようにも思える。
 すぐに見慣れぬ風景の正体に気づいた。分かってしまえばつまらないものだった。ぼくのミスでもないし、異世界に迷い込んだのでもない。
 今、JR中央線は大工事の真っ直中にある。新しく導入される12両編成の長い車両のためにホームの延伸工事が進んでいる。混雑緩和や運送力強化のためにいくら車両を長くしても、ホームが短いままだったら意味はない。高架駅は最低限のサイズで作られているし、地上にある駅は設計の古さが拡張を阻んでいる。増える2両のために約40m確保するのに四苦八苦しているようだ。
 駅によってホーム延伸の方法が違う。ホームの前後に1両分ずつ追加する駅もあれば、前後のどちらかに2両分を確保する駅もある。工事の手順も様々で、停車位置が変わる駅もあれば、そのままの駅もある。
 ぼくが乗った駅の停車位置は変わっていなかった。ところが、下車した駅は停車位置が2両分もズレていた。これが目の前に見知らぬ風景が広がった理由。
 さて、工事が見せた風景だと気づくまでのわずかな間にぼくを支配した不安と高揚が入り混じった感覚は何だったのだろう?
 しばらく考えてわかった。旅の感覚だ。
 旅先で見知らぬ駅に初めて立ったときの期待と不安が入り交じるあの感じとまったく一緒。旅なんてお金と時間をかけて遠くに行かなくても味わえるんだな。ルーティン化した行動を柔軟に変えていけば、毎日がもっとワクワクに満ちるかもしれない。