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視線の共有

by 唐草 [2022/09/15]



 通りの向こうの木に珍しい鳥を見つけた時。庭木の奥に止まる危険な虫を見つけた時。遠くのビルの窓の向こうに怪しげな影を見つけた時。夜空にまたたく星の間にきらめく何かを見つけた時。
 そんな時、隣りにいる人に自分の見つけたものの位置を教えるのは意外と難しい。
 まっすぐに指を指しても目線の違いから離れたところを見てしまう。風景を利用して「目の前にある電柱から視線を左に動かして、最初に見えた木の枝から上を見て、Y時に別れた枝の左側」とチェックポイントを設けて説明しても、やっぱり立ち位置や背の高さの違いからなかなか伝わらない。
 努力をして相手に寄り添っているつもりでも、しょせんは自分の目に映る風景に則した説明でしかない。回りくどい説明をするよりも、近いものであれば棒で直接指したり、遠くのものであればレーザーポインターで照らした方がずっと正確で早い。ただ、都合よくいい感じの棒切れが転がっていることもないし、レーザーポインターをポケットに忍ばせていることもない。そんなものを用意しているのは授業のときぐらいだ。
 誰かと正確に視線を共有して感動を分かち合ったり、危険を回避するためにはどうするのがベストなのだろうか?この問は、気が遠くなるほど長い間にわたって人間を悩ませてきたことだろう。
 でも、もう心配することはない。テクノロジーの進化が、人と人の間にある近くて深い溝を埋めてくれる。
 スマホで写真を撮って、その場で「ここだ」と画面を指差せばいい。こうすれば自分がどこを見てほしいのかを簡単かつ正確に伝えられる。雄弁に語るよりも1枚の写真のほうが遥かに効果的だ。
 先日、庭木の奥に2個目の蜂の巣を見つけた時にスマホカメラが大活躍した。おかげで事前に危険を回避することができた。
 もし、スマホカメラがなかったら「ねぇねぇ、ここからまっすぐ見た時にある枯れ枝から右を見て、1枚目の葉っぱの付け根の奥を」とか言っている間に蜂に刺されていたかもしれない。
 感動も危険も何もかもをデジタルで隣人に伝える時代。味気ないって言う人もいそう。