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他の国の声

by 唐草 [2022/12/13]



 屋外展示の博物館の横を歩いていたらアナウンスが流れていた。敷地外を歩くぼくには関係ないので聞くつもりはなかった。しかし、プロが吹き込んだであろう通った声は、まるでぼくの耳を目指して飛び込んでくるかのようだった。
 そろそろ閉館時間らしい。それを聞いていたら、ぼくも急いで帰らなくてはならない気がしてきた。
 この手のアナウンスは、圧倒的に女声が多い。ここでジェンダー論を繰り広げるつもりはない。女声が採用されているのは、音が高いほうが雑音に影響されずに聞きやすいという明確な利点があるからだ。アナウンスが渋いイケオジボイスだったら敷地外のぼくの耳まで届いていなかっただろう。
 一通り閉館のアナウンスが終わったら別の声が流れ始めた。先程のアナウンスに比べて何を言っているのか聞き取りにくい。
 耳を澄ますと英語で閉館案内をしていた。英語が流れてくると思っていなかったので聞き取れなかったのもあるけれど、日本語よりも声が低かったのも聞き取りにくい一因だったと思う。
 アメリカの映画やドラマを字幕で見ているといつも感じるのだが、アメリカの女優さんの声は日本の女優さんの声よりも低い。それと同じようにアナウンスの声も低いのが良しとされるのだろうか?ぼくには聞きにくいように思えてならない。
 英語のアナウンスが終わったら甲高い声が響いた。いわゆる頭のてっぺんから出ているというような声だ。言葉の感じからすると中国語だろう。そういえば、中国の女性はアナウンサーでもキーが高い印象がある。中国語はさっぱりわからないので何を言っているかわからないが、それでも音はしっかり飛び込んでくる。
 最後に流れたのは韓国語だった。音の高さは日本と同じぐらい。同じ朝鮮系の言葉でもテレビでよく目にする北朝鮮のプロパガンダニュースとは大違い。落ち着いて聞くことができる。
 他の国のアナウンスの声ってどのぐらいのキーなんだろう?ワクワクしながら韓国語のアナウンスが終わるのを待っていた。次はスペイン語だろうか?
 期待とは裏腹にスピーカーは沈黙してしまった。ぼくのささやかな疑問が解決することはなかった。