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シーサー

by 唐草 [2022/12/15]



 なんと四半世紀以上勘違いしていたことがあった。
 沖縄のシーサーって犬じゃないのね。
 ぼくはシーサーを初めて見て以来、ずっと犬だと思いこんできた。ぼくが犬だと思い込んでしまったきっかけは実に単純なもの。テレビで沖縄の住宅の門柱に据えられた立派なシーサーを見て神社の狛犬を連想したから。なので、シーサーは沖縄版の狛犬みたいなものだと考えていた。
 シーサーの風貌をよく見れば首元にある独特の巻毛が目につくだろう。ここから動物を連想すれば獅子、つまりライオンにたどり着くべき。古い東アジア文化の絵画ではタテガミを巻毛として表現してきた。それの立体版だ。
 ところが、ぼくは巻毛には一切注目していなかった。それよりもギョロッとした瞳と大きな鼻に目を奪われていた。その造形からはネコ科のシャープな気配を感じない。むしろ犬のようなたくましさを感じる。このことも犬だとの思い込みから抜け出せなかった理由の一端だったかもしれない。
 「雀、百まで踊り忘れず」と言う通り幼い頃の印象から抜け出すのは容易なことではない。
 特に「沖縄」というのが、ぼくを惑わし続けた要因なのでもないかと疑っている。
 琉球文化は独自性が強い。日本的な要素もある一方で、大陸的な要素も持ち合わせている。形は日本的でも色使いは大陸的というのがぼくの漠然とした印象。文化的な交流が盛んな土地なので、多くの要素がミックスされて独自の進化を遂げたのだろう。
 そんな特別な文化を持った地域の像なので、ぼくとは異なる解釈をして意匠化したものがあっても不思議はない。犬を力強く描いたらシーサーになったと言われても納得できるだけの独自性がある。それにヤンバルクイナのように沖縄固有の巻毛の琉球犬がいるかもしれない。
 そんな期待にも似た過度な特別感が、ぼくの沖縄感をひどく歪めてしまった。沖縄は素敵な南国かもしれないが、だからといってワンダーランドなわけではない。
 シーサーが獅子だと知って初めて現実を直視できたような気がする。
 でも、やっぱり沖縄には巻毛でギョロ目の琉球犬がいてほしかったな。