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夢を売る

by 唐草 [2023/01/27]



 電車で向かいの天井付近に貼られた1枚の広告が目に止まった。ド派手な赤が一際目を引く。全体に紅白や金色がふんだんに使われておりおめでたい配色だ。
 お正月っぽい配色とも言えるが、それはすでに季節外れ。いったい何の広告だろうと文字にも目をやった。
 広告の正体は結婚情報誌『ゼクシィ』だった。
 確実にぼくに縁のない雑誌だ。これまでに必要になったこともなければ、この先必要になることもない。書店に並ぶ雑誌の中から読みたいものと読むべきものを一冊づつ取っていったとして最後に残るのがこれだと断言できる。
 そんな無縁な雑誌の見出しに目を向けるのは、ある意味で異世界の書物に目を通すのと同じ。すべてが新鮮だったが、手を取りたくなる要素は微塵もなかった。
 広告を一通り見た後、ぼくの心には大きな違和感が残った。
 広告の作りや雑誌の内容が、完全に女性誌の作りをしていたことだ。
 雑誌を作る際、ターゲットを狭い範囲に限定することは一般的。ファッション誌は、明確に男性向け女性向けを分けている。これは紹介するアイテムが異なるから当然のこと。また、趣味の雑誌もボリューム層を意識して男性向けと女性向けに分かれているのは珍しくはない。書店で自動車雑誌を探せばほとんどが男性向けだし、手芸雑誌を探せば多くが女性向けとなっている。
 ここで改めて結婚という話題を考えてみよう。このテーマほど男女比が拮抗するものはないだろう。同性婚を含めたってその比率は変わらない。もしかしたら世界で一番男女比が等しい話題と言って差し支えないかもしれない。
 それなのに目の前にある雑誌の広告は完全に女性向け。ぼくが来年に結婚を予定していたとしても手に取りたいなと思わせるものはなさそうだ。
 商売をする上でフェアであることよりも、多くいる層に確実に売るほうが重要だ。とは言え、男女平等が声高に叫ばれるこの時勢にこうも女性側によった結婚観を全開にしていいのだろうか?
 情報誌の体をして夢を売るならこれが正解なのか?そんなんだから『ゼクシィ』を恐怖する男が少なくないのではないのでは?