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アポロ13号の教訓

by 唐草 [2023/02/07]



 映画『アポロ13』は秀逸な伝記映画だ。実写と見紛うロケットのCGや特撮を駆使した無重力表現などの当時最先端のVFXに目を奪われがちだが、映画のテーマはそこではない。宇宙という手の届かぬ極限空間で発生した未曾有の危機に対して不屈の信念で挑んだ人々を描いた映画だ。
 月に立つ名誉を掴んだ人、その栄誉を手からこぼした人、華やかな舞台には一度たりとも上がることのなかった大勢の人々。異なる背景の大勢が一丸となって不可能と思われた作戦に取り組む姿は、ひとりのスーパーヒーローが天賦の才で不可能を成し遂げるよりもずっと心に訴えるものがある。名もなき人々(とは言えNASA職員なので超絶エリート)が、団結すれば不可能などないと思えてくる。
 好きな映画なので熱く語ってしまった。でも、映画の宣伝をしたいわけじゃない。この映画のワンシーンがぼくの心に強く残っていて、それは映画のテーマからおよそかけ離れたいびつな形でぼくの行動原理となっている。
 燃料タンクが爆発した宇宙船は、深刻な電力不足に陥る。そのため通常の手順では大気圏再突入用のコンピュータを起動できない。どうやってその危機を乗り越えるのかと絶望するシーンがある。
 そのシーンでは最終選考で宇宙船乗組候補から漏れた地上待機の飛行士が大活躍する。地上から全力で宇宙の仲間をサポートして4人のクルーが1つのチームへ戻る。地球に残された嫉妬や落胆なんてちっぽけなものを友情が超える名シーンだ。
 本当にいいシーンなんだけど、ぼくの関心は別のところにある。
 地上に残された飛行士は、地上にある検査用の宇宙船で電力不足を再現してコンピュータを起動する様々な手順を試していく。どのスイッチをどの順番で押すのか?ライトのない暗闇で操作は可能か?そういったことを宇宙と同じ環境を再現して確認していく。そして、ついに究極の節電方法を実現する手順を見つけ出し電力不足を克服する。
 ぼくはこの一連のシーンが大好きだ。
 節電するときはいつもこのシーンを思い出している。ぼくの節電は宇宙船を救う大切なステップなのだ。そう考えるだけで、退屈で貧乏くさい節電が宇宙への冒険へと早変わりする。