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中華料理の神様

by 唐草 [2023/02/21]



 少し前に「自身の名を冠したレシピを開発したカリスマシェフよりも、ド定番のレシピを後世に残した無名のシェフたちのほうが偉大だ」と書いた。要するにプリンのレシピを作り上げたパティシエたちは偉大な天才だと声を大にして言いたいのだ。
 普段口にしている料理を考案した人の名前をどれだけ知っているだろうか?肉じゃがは、東郷平八郎が船のコックにビーフシチューを作らせようとしてうまくいかなかったことをきっかけに誕生した。そんな説が流布しているが、これはデマだとも言われている。仮に本当だとしても、ぼくらは東郷平八郎の無茶振りにつきあわされたコックの名前を知ることはなかっただろう。
 他の料理も同じようなもの。日本式カレーを作った人もトンカツを作った人の名前も知らない。ちなみにこの2つは特定されている(諸説あり)が、残念ながら「島田信二郎」の名を見ても「おっ、トンカツを作った人だ」と思うことはない。
 一方、独自レシピを発信する今を輝く有名料理人たちがいる。カリスマ主婦、料理YouTuber、料理愛好家と肩書も現代らしい。彼らの新しく楽に作れるレシピは、どれも美味しいのだろう。だが、30年先まで残るだろうか?もし現在の評価が「有名人が作る料理」というだけなら残るものは無い。彼らの最新料理は、誰が作っているのかという視線がなくなった時に初めて新しい定番へのサバイバルレースに参加できるのだろう。
 レシピが定番料理になるには厳しい道のりがある。美味しいだけではダメ。平凡なスキルでも作れて、なおかつ身近な食材だけで作れるものでないと生き残れない。広く一般に自分の名を残すことはできなかったとしても、1つでも定番レシピを未来に残せたのなら料理人として最高の栄誉だろう。
 もし誰もが知る定番レシピをいくつも残すことができたのなら、それは料理の神様のような存在と言っていい。
 今、ぼくらが日本で楽しむ中華料理の大半をたったひとりの料理人が本場の味をアレンジして作ったものだと知った時、無神論者のぼくでさえ神の存在を信じそうになった。陳さん、ヤバすぎるよ。