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5mmの差

by 唐草 [2023/03/02]



 かしこまった書類を用意しなくてはならない面倒な事態に陥っている。自分で望んだ結果を得るためなので仕方ないとは言え、慣れないし楽しくない事務作業をするのは気が進まない。憂鬱な気分なのは、この文章を表に出すと蜂の巣を突いたようなことになりかねないというのも大きい。なので、ネットで配布されているテンプレを書き換えるだけの簡単な作業なのに全然はかどらない。
 とは言え、ぼくの進みたい道は蜂の巣の先にある。苦虫を噛み潰したような顔をしながらでも、この書類を仕上げる必要がある。
 初めての書類なので勝手がわからない。どうやら封筒に入れて出すのがマナーらしい。しかも茶封筒ではなく、中身の透けない封筒が良いとされている。請求書などをデータでやり取りするようになって以来、何年も封筒になんて触っていない。果たして手元に封筒はあるだろうか?
 文房具類が入っている引き出しを引っ掻き回したところ白い封筒が出てきた。幸先の良い展開だ。
 ぼくが封筒に記すのは住所でも宛名でもない。今回は書類の内容を示した3文字を書くだけ。それも小学生でも書ける漢字。だが、文字を書くのが久々すぎて自信が持てない。手元にあった紙で練習をしてみるもどうにも不格好。3文字といえどもプリンターで印刷したほうが良さそうだ。
 と言うわけで、Wordで印刷データを準備した。そしてプリントしようとしたときに気づいた。この封筒は細身の長4号サイズ。A4の紙を三つ折りで入れるには5mm足りない。長4号はB5サイズの紙を入れる封筒なのだ。
 A4が入る一回り大きな長3号の封筒を探すが、残念ながら茶封筒しか見つからなかった。無いものは仕方ないし、だからといって1通の書類のために封筒を買うのも面倒なので、用意していた書類をA4ではなくB5に印刷することにした。すぐにサイズを変更できるのはデジタルデータの良いところだ。
 しかし、印刷は頓挫した。我が家にB5サイズの紙は1枚もなかったのだ。
 封筒もなければ、用紙もない。なにもない。さっさと面倒な書類を出して楽になりたいぼくの気持ちだけが空回りしている。