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息も吸えないほどに

by 唐草 [2023/05/05]



 4月末の悲観的な天気予報とは打って変わって、天気に恵まれた今年のGW。窓を開けて過ごすのが心地よい日が続いている。
 恵まれた天候とマスク着用緩和を含むコロナ禍からの脱却で、世間は賑わいを取り戻している。とは言え、それはぼくには無縁の話。今年の連休は、読書とゲームに費やすと決めていたからだ。
 ところが、窓から流れ込む爽やかで暖かい五月晴れの空気には、ぼくの引きこもりマインドをも解きほぐす包容力があった。部屋でゴロゴロしているのはもったいない。そう思うと、外に出たくてたまらなくなった。
 気づけば、サイクリングヘルメットを被り自転車にまたがろうとしていた。
 昼日向にサイクリングに出るのは何年ぶりだろう。大好きな自転車に乗るのも通勤や買物など必要最小限に限られていた。おそらく昼間にサイクリングに出るのは4年ぶり。
 きっと体は鈍りきっているはず。遠乗りなんて絶対無理。走りなれた10kmのコースを周っても、膝や太腿が悲鳴を上げるだろう。
 走って分かったのは、鈍っているなんて表現は生ヌルいということ。衰えていたとしか言いようのない状況に陥っていた。
 快調に走れたのは駅までの距離と同じ3kmだけ。その後は、力を込めてペダルを踏めなくなっていった。
 異変が顕著になったのは6kmを超えたとき。息が上がって吐きそうになってしまった。まるで時速40kmで走ったときのよう。でも、時速24kmぐらいしか出していない。それなのになんで息が上がって苦しいのだろう。更に速度を落として息を整えながら体を確かめた。
 すると背中が痛いことに気づいた。ちょうど肩甲骨の真ん中あたり。自転車に乗っているときにぶつける場所ではない。なんでそんなところが痛いんだ?
 しばらく走って己の体を理解した。
 背筋が落ちすぎて自転車を漕ぐ上体の姿勢を維持できなくなっていた。自分の体の重さに背中が悲鳴を上げているのだ。そして姿勢が崩れて肺が押されて呼吸が浅くなっていた。
 そう、息を吸うことすら困難なほどに筋力が落ちていたのだ。
 それでもサイクリングはいいものだ。もっと乗って体を取り戻そう。