by 唐草 [2023/09/12]
1行だけ表示が出るはずのプログラムを動かしたら、目にも止まらぬ速さで大量の文字が流れていった。それを見た瞬間、背中がゾワッとした。
起こったことを理解するのに時間はかからなかったが、ぼくの口から悲痛な音が漏れるまではしばらく間があった。比喩でもなく冷や汗をかいている自分に気づいたのは、それから数秒経ってからだった。
今日は半年前に移行したデータベースの修正をしていた。このデータベースは発注者から「切り替え前に新システムに慣れる期間がほしい」という要望があった。そのため、慣らし期間に仮URLで動かしていた。
その影響で、古いシステムから移行したデータは仮URLで登録されている。移行後は、混乱を避けるために転送設定をうまいことやって仮URLでも本番URLでも同じものにアクセスできるように細工した。それは良かったのだが、リリースから半年経った今でも仮URLは大量に残っているし、未だに仮URLで新規登録する職員もいる。
2つのURLが混在しているのは厄介。なにより半年経っても古いシステムの呪縛から逃れていないのが腹立たしくもあった。
なので、プログラムですべての仮URLを本番URLに置き換えることにした。
難しそうに聞こえるが、実態としては単なる文字列の置換でしかない。ぼくがプログラムを書き間違えない限り、誰も修正に気づかないぐらい静かに終わる作業のはずだった。
とはいえ、ぼくがプログラムを書き間違えないなんて言うのは、8月の東京に雪が降るぐらいのこと。いきなり実行するのはリスクが高い。
そこで、まずは1つずつ書き換えていってエラーチェックしようと考えていた。だが、ぼくのプログラムには致命的な問題があった。
1つ終えたら終了という部分にエラーがあったので、一気に全部を処理してしまった。件数にして2,874。
幸いにも置換処理部分にミスはなかったので、結果は完璧だった。ただ、完璧であることを確認するまでの間、ぼくは死んだような顔色だったはず。冷房が効いた部屋なのにシャツがグッショリと湿るほど冷や汗をかいていたのだから。
やはり、8月の東京に雪は降らない。