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くるみ割りマシン

by 唐草 [2023/11/16]



 ミックスナッツに入っていた殻を割られたクルミを手に取り、口に入れる前にしげしげと見つめて思う。どうやって脳みそみたいな複雑な形のクルミを取り出しているのだろう?
 ぼくが手に取ったのは半分に割れていたが、世の中にはまるでクルミの実の中から削り出したかのように完璧な形のクルミもある。丁寧に割れば形を崩さずに取り出せるかもしれないが、それでは大量生産を実現するのは難しい。
 いったいどうやって硬いクルミの実から柔らかく複雑な形の可食部を取り出しているのだろう?魚の骨取りのように人件費の安い国で信じられないような労力を払っているのだろうか?それともクルミの実には、パッカンと割れる秘孔のようなポイントでもあるのだろうか?はたまた某映画のように人ならざる者の手を借りているのだろうか?
 検索したらYouTubeにクルミ割り工場の動画が上がっていた。
 動画で紹介していた方法は、ぼくの想像よりもずっとワイルドで、同時に合理的だった。アメリカの工場だと思われるが、まさにアメリカンなやり方だった。
 ベルトコンベアで運ばれる大量のクルミは、金属製の巨大なクルミ割りマシンへと運ばれる。そのマシンは見た目こそハイテクを駆使していそうだが、仕組みは伝統的なクルミ割り人形と同じ。枠にはまったクルミに圧力をかけて殻を粉砕するだけ。
 機械の精度と速度を持ってすれば、可食部を傷つけずに割れるかというとそんなことはない。人間がテコの原理を使って割ったとき同様に可食部も砕けてしまうことが少なくない。
 とは言え、何万個も割っていれば可食部がきれいに出てくることもある。そんな運の良い偶然の産物を無傷のA級品として売っているだけ。ちょっと割れたのはぼくが食べるようなB級品。完全に粉砕されたものは、クッキーなどに練り込む砕きクルミとして売るそうだ。
 つまり、きれいに取り出す努力なんて微塵もしていなかったのだ。数の暴力とも言える方法で良いのを選別しているだけ。
 この大胆で合理的な発想が、なんともアメリカ式。日本だったら丁寧に実を割る複雑なマシンを作っていそう。ぼくはアメリカ式のほうが好きだ。