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パーフェクトよりパーフェクト

by 唐草 [2023/11/17]



 昨日、型崩れのないクルミを物量作戦で取り出すアメリカ式クルミ割りについて書いて、別のアメリカ的合理性を思い出した。
 ネジなどの単純な工業製品をアメリカで大量購入すると、100個入りのパックに105個ぐらい入っていると聞いたことがある。ぼくはアメリカからの輸入に関わったことはないが、中国からの輸入で指定数より少し多い製品が送られてくることがあった。
 勘違いしないでほしいのだが、アメリカや中国は指定数すら満足に送れないという訳では無い。また、おまけを入れてくれた訳でもない。彼らは、きちんと使える100個を届けるために数個多く送っているのだ。
 初めはこの発想を理解できなかったが、それはぼくが日本的な考えに凝り固まっていたから。
 どんな製品の製造でも数パーセントの不良品が発生する。それにどう対応するのかは、文化や価値観によって異なるようだ。
 日本なら製造工程を見直し設備を刷新して不良品発生率を下げ、検品を強化して不良品を出荷しないようにする。コストを惜しまず100個が完璧に使える状態を目指す。まさに優等生のやり方だ。
 一方アメリカは、そうは考えない。数パーセントの不良品が発生するのは仕方ないと割り切り、その確率から逆算して初めから数個余分に製品を出荷する。結果として100個使えればOKだという発想だ。検品は客任せとも取れる態度。完璧を求めることを好む日本人には雑に見える。
 とは言え、冷静に損得勘定をすれば、設備や管理に投資するより5個余計に出荷するほうが安くつくことも多い。数字だけを見れば、アメリカ式のほうが合理的な場合があるのは確かだ。現に、ぼくも中国の多く出荷するやり方が不都合に繋がったことはない(ただし別の理由で大問題にぶつかったことはある。中国との取引は油断できない)。
 アメリカ式の考え方には賛同できないものもあるが、このネジの出荷みたいにあえて100%を目指さない合理的な考え方は大いに支持している。これを知ってからぼくは身を粉にしてまで100%を目指す努力はしなくなった。それより安定して素早く95%を叩き出せるほうがずっと大事。