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手鏡に映るのは

by 唐草 [2024/02/09]



 ぼくが住む市は、年に1回無料で歯科健診を受けられる。ぼくは10年ぐらいこの制度を本来の趣旨から少し外れた使い方で利用している。
 歯科検診はほとんどの部分を歯科医ではなく歯科衛生士が担当する。そのため新規に診療予約を入れると1ヶ月待ちになる大人気のかかりつけ医でも簡単に予約が取れる。それでも検診の最後に歯科医に歯の具合について相談できる。
 ぼくは予約を優先的に取れることを利用して、歯科医に見てもらいたい歯のトラブルを自覚したときに歯科健診を申し込むようにしてきた。そう、ぼくにとって歯科検診は歯医者予約の優先権券なのである。
 検診で虫歯が見つかったこともある。また、奥歯を無意識に噛み締めていることが歯の痛みの原因だと判明したこともあるし、歯茎が痩せたことがしみる原因だと分かったこともある。
 とは言え、歯にトラブルを感じることは少ない。予約券として使わず年度末を迎えてしまうことも多い。今年もそうだった。とは言え、トラブルを自覚していないからと言って検診を受けないのは損。歯医者に歯の健康のお墨付きをもらうためだけに検診を受けてきた。 
 口を大きく開けながら歯科衛生士が「ニーシャセン」とよく分からない呪文みたいのを呟いているのをボーっと聞いていた。
 検診が終わると小さな手鏡を渡された。そして「鏡を使ってここを見てください」と言われて奥歯を突かれた。
 「色が違っていますね。まだ小さいですけど虫歯ですね」と告げられた。
 そうか虫歯があったのか。示された場所は、先日「最も歯磨きの意識が低下する場所」としてピックアップした歯だった。ぼくの自己分析は正確だったようだ。
 分析が正解だった手応えと、認識したけれど虫歯を防げなかった落胆がぼくを襲う。だが、そんな気分はすぐに吹き飛んだ。
 手鏡には確かに示された自分の奥歯が映っている。この歯なら虫歯になってもおかしくないが、素人目にはどこが周囲と色が違うのか全然わからない。でも、歯科衛生士の話を理解できないバカなやつだと思われるのがイヤだという一心から納得した顔で相槌を打つ。
 本当にどこの色がどう違うんだ?